Q&Aで学ぶ契約書作成・審査の基礎 第3回 – 契約のスタイル:契約書末尾

 

今回は, 前回に引続き契約書のスタイルやそれに用いる用語などに関し解説します。順番から言えば, 今回は, 契約書の本文(具体的条項部分)のスタイル等の解説ですが, それについては解説することが多いので, 先に, 契約書末尾について解説します。

なお, 本Q&Aは, 全く新任の法務担当者(新卒者や法学部以外の出身者を含む)も読者として想定しているので, 基本的なことから解説していきます。

【目  次】

(各箇所をクリックすると該当箇所にジャンプします)

Q1: 契約書末尾の書き方に実務上慣習的な決まりはありますか?

Q2: 契約書末尾文言の意味は?

Q3: 契約書末尾文言は必須ですか?

Q4:電子契約の場合, 契約書末尾文言はどうすればいいですか?

Q5:契約書末尾の日付けの書き方・意味は?

Q6:それでは契約書末尾の日付けや発効日はいつにしたらいいですか?

Q7:契約書末尾の当事者の記載はどうしたらいいですか?

Q8:契約締結名義人は代表取締役でなければいけないのでは?

Q9: 「本社所在地」と「本店所在地」は違いますか?

Q10:押印のハンコは?

Q11:電子契約の場合も印影(印を押したあと)がないといけない?

Q12:そもそも電子契約は有効・適切? 

 

Q1: 契約書末尾の書き方に実務上慣習的な決まりはありますか?

A1: 契約書末尾(末尾文言・署名欄)の書き方について特に決まりはありませんが, 従来の紙の契約書の場合, 一般的には, 以下の例のようなスタイルが多いと言えます。

 

本契約締結の証として, 本書2部を作成し, 甲乙記名押印の上, 各1部を保有する。

          

甲:東京都XX区XX X丁目X番地X

__________株式会社

代表取締役社長 XX XX

 

乙:東京都YY区YY Y丁目Y番地Y

__________株式会社

代表取締役社長 XX XX

 

Q2: 契約書末尾文言の意味は?

A2: 以下の通りです。

(a)「本契約締結の証として」:契約書を契約成立の証拠として作成することの確認です。

(b)「本書2部を作成し」:契約当事者が三者以上の場合は「本書3部を作成し」等となります。

(c)「甲乙記名押印の上」:「記名」の意味は, 辞書では「氏名を書きしるすこと」ですが, 契約の当事者が企業であれば, 甲乙それぞれの住所・会社名・契約締結名義人(各当事者の代表取締役・本部長・部長等)の肩書・役職名と氏名を記入した上, という意味です。企業同士の契約であれば通常予めWord入力しておきます。

「押印」は「捺印」とされている場合もあります。ここでは, どちらも使っても意味に違いはありません。ここで押印するハンコについてはQ10を参照して下さい。

「署名」:「甲乙記名押印の上」ではなく「甲乙その代表者が署名の上」等として署名(サイン)をすることもありますが, 契約の調印式を行う等の場合を除き, 通常は記名押印方式が用いられます。

(d) 「各1部を保有する」「各自その1部(通)を保有する」等と表現されている場合もあります。

 

Q3: 契約書末尾文言は必須ですか? 

A3: 必ずしも必須ではありません

【解 説】

ここに書くことは権利・義務に直接関係するものではなく事実の確認であり, 記名押印の事実は, 実際に記名押印があるので明らかです。また, 契約書を2部(通)(二当事者の場合)作成し, 各当事者がそれぞれその1部(通)を保有することも, 契約書が各当事者のために契約成立の証拠として作成されることからいわば当然のことです[1]

従って, 契約書末尾の文言がないこともあります。例えば, 比較的簡単な覚書等では省略されている場合があります。

ただ, ある程度の長さの契約書には通常上記のような文言が記載されています(何も書いていないと何となく座りが悪い)。

 

Q4:電子契約の場合, 契約書末尾文言はどうすればいいですか?

A4: いろいろな書き方があり得ますが, 例えば以下のような文言が考えられます。

(例1) 「本契約締結の証として, 本契約書を電磁的記録により作成し, 甲乙これを保有する。」

(例2) 「本契約締結の証として, 本契約書を電子的に作成し, 甲乙これを保有する。」

(例3) 「本契約締結の証として, 本契約書を作成し甲乙保有する。」

(例4)「以上の通り甲乙合意し本契約を締結する/した。」

【解 説】

上記(例1)と(例2)は, 電子契約であることを明示した記載方法です。両方とも「…作成し, 甲乙電子署名の上これを保有する」のように下線部分を追加することも考えられますが, 「電子署名」とは何か等, 余計な疑問が出てくる可能性がある一方, 電子署名にあえて言及する必要性もないので, これらの例では言及していません。

上記(例3)は, 「本契約」には紙だけでなく電子Fileも含まれるという解釈が現在では十分可能であり, また, 法令上紙でなければいけない契約書(企業間の契約書では非常に少ない)を除けば, 紙か電子Fileかで争われる事態もほとんど想定されないと割り切った文例です。これでも問題ないでしょう。

上記(例4)は, 「証として」, 「作成」, 「保有」等については当然のことまたは事実問題なので, あえて触れない文例です。

上記(例3)と(例4)は, 紙の契約・電子契約, 両方共通に使えるので, 相手方企業の意向等により予めどちらになるか決められない場合に使うことも考えられます。

 

Q5:契約書末尾の日付けの書き方・意味は?

A5: 日付け中の「     年」の部分は西暦でも和暦でも構いませんが, 西暦の方が有効期間(年数)の計算や契約書の管理・検索等で便利なので, 一般的には西暦が適切でしょう。

契約書末尾の日付は, 通常, 契約の「締結日」と呼ばれますが, それは実際に両当事者が記名押印した日ではなく, 当事者間でその契約の規定の適用を開始することを合意した日を意味します。但し, 契約本文中に別途その契約の発効日(または有効期間)が規定されている場合には, その発効日(または有効期間開始日)が, その契約の規定適用開始日となります。

本文中に発効日が規定されている場合は, 契約書末尾の日付は記載されない(不要/却って紛らわしい)場合もあります。両方ある場合は, 法律になぞらえると, 契約書末尾の日付≒法律の成立日, 発効日≒法律の施行日のような関係になります。

【解 説】

企業間における契約書の取り交わしは, 通常, ①当事者Aが契約書2部(二当事者の場合)を(通常記名部分まで記入して)作成し, 社内稟議手続を経て押印した上, その押印済みの契約書2部を郵便等でBに送付⇒②相手方Bがその社内稟議手続を経て押印をし, A・B押印済みの2部の内1部をB保有分とし, 他の1部をAに返送することにより完了します。

この場合, 契約締結日=両当事者が記名押印したことになる日と考えると, その日としては, (i) Bによる記名捺印が完了した日, (ii)BからA・B記名捺印済みの1部をAに発送した日, または, (iii)それがAに到着した日が考えられます。

しかし, 契約の当事者にとり重要で必要なのは, このような日ではなく, その契約の規定の適用を開始する日なので, 通常, それを契約交渉の過程で合意しておき予め記載しておきます。従って, 契約書末尾の日付は, 実際に両当事者が記名押印した日ではなく, 当事者間でその契約の規定の適用を開始することを合意した日を意味します。これは, 電子契約でも同様です。

 

Q6:それでは契約書末尾の日付けや発効日はいつにしたらいいですか?

A6: その契約の規定を適用しようとする取引等の実行・開始の前にする必要があります。

【解 説】

契約書末尾の日(以下便宜上契約の「締結日」という)=契約の発効日の場合, または, 契約本文中の発効日は, その契約の規定を適用する取引等の実行・開始の前(例:売買契約に基づく目的物引渡し前/秘密保持契約に基づく秘密情報開示前/取引基本契約に基づく第1回目の注文書発行前)にする必要があります。そうしないと, 現実には, 契約の締結日・発効日前に取引等の実行・開始行為があった場合, その実行行為等にその契約の規定が適用されないということになるからです。

実際には, (好ましいとは言えませんが, )当事者双方とも履行行為が完了(例:売買目的物の引渡し・代金支払とも完了)した後で, (社内管理・品質保証の内容・条件確認等の目的で)契約書が作成・締結されることさえあります。そのような場合に契約締結日・発効日が履行行為開始前にされていること(バックデート)は実務上はよくあります。このような場合でも, 通常は, 契約締結日・発効日前の履行行為にその契約の規定を適用することが両当事者の意思であったと解釈され, かつ, そのような合意も契約自由の範囲内なので法的に有効と判断されるでしょう。[2]

【契約の締結日・発効日を一定の日の後にしなければならない場合】上記に関わらず, 以下のような場合には, 契約の締結日または発効日はその承認等の後でなければなりません。

①契約の対象としている取引に取締役会決議による承認を要する場合:その承認後の日

(例)ある会社Xの取締役が, 他の会社(例:関連会社)Yの代表取締役として, X・Y間の契約を締結する場合。(自己取引:会社法365条)。- この場合X取締役会での事前承諾が必要。

②契約の対象としている取引に国等の許認可を要する場合:その許認可後の日

但し, この場合には, 契約自体は許認可前に締結し(契約書末尾の締結日は許認可前), 契約本文中に「本契約は○○○○の許可が得られた時に効力を生ずる」等と規定することが可能な場合もあります。

 

Q7:契約書末尾の当事者の記載はどうしたらいいですか?

A7:当事者の住所, 会社名, および, 各当事者を代表または代理して契約を締結する者(以下「契約締結名義人」という)の肩書と氏名を記載します。

【解 説】

【各当事者の会社名】当事者を確実に特定するため, 正式名称(登記上の名称)を正確に記載しなければなりません。

【各当事者の契約締結名義人の肩書】Q1の例では両当事者とも「代表取締役社長」となっていますが, 他の例としては, 「○○○○事業本部長」, 「○○○○支社長」, 「購買部長」等となっている場合もあります。特に大企業の通常の契約では, 契約締結名義人が代表取締役の場合はむしろ少なく, 後者の例のような場合が多いと言えます。

【各当事者の住所】契約締結名義人が, 本社にいる代表取締役・事業本部長等であれば本社住所, 地方の支社長・工場長等であればその支社・工場等の住所を通常記載します。

 

Q8:契約締結名義人は代表取締役でなければいけないのでは?

A8:一般には, 相手方・自社とも, 代表取締役に限らず, 「○○○○事業本部長」, 「○○○○支社長」, 「購買部長」等であっても契約締結名義人とすることができます

【解 説】

確かに, 会社法349条4項には, 「代表取締役は, 株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と規定されてるので, 代表取締役にはその会社の契約の締結権限があります(「裁判外の行為」に該当)。従って, 代表取締役である(一般に「代表権がある」と表現される)「代表取締役社長」, 「代表取締役会長」, (大規模な会社等にしばしば見られる)「代表取締役副社長」等には契約の締結権限があり, 契約締結名義人になることができます。

しかし, 上記Q7で触れたように, 実際には, 「○○○○事業本部長」, 「○○○○支社長」, 「購買部長」等が契約締結名義人となっていることの方が多い。これをどう理解すればよいのか?

この点, 会社法14条1項には, 「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は, 当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する」と規定されており, 同2項には「前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は, 善意の第三者に対抗することができない」と規定されています(なお, 会社法13条(表見支配人)にも会社の本店・支店の事業の主任者(支配人)に関し同様の規定がある)。

そこで, 上記の例で言えば, 「○○○○事業本部長」はその事業本部に関する事業・営業の, 「○○○○支社長」はその支社における事業・営業の, 「購買部長」は会社の購買業務の(上記の「事業に関する…事項の」)委任を受けた使用人であると一般には受け取られるので, その結果, (i) それらの者はそれぞれの事業・営業・業務の範囲内の契約に関し所属会社を代理して契約を締結する権限を有するものと解され, (ii)その範囲内の契約であるにもかかわらず社内的にはその契約締結権限がないルールにしていたとしても, (取引の安全確保のため,)そのような事情を知らない(善意の)契約相手方にはその権限がないことを主張(対抗)できません。

従って, 相手方の契約締結名義人の肩書が「○○○○事業本部長」, 「○○○○支社長」, 「購買部長」等であれば, 特にそれを疑うべき合理的理由がない限り, その事業等の範囲内の契約であれば, 現実の契約締結権限の有無を詮索せずに契約を締結してもよいということになります。[3] 同様に, 自社についてもこれらの肩書の者を契約締結名義人にしてもよいということになります。

 

Q9: 本社所在地」と「本店所在地」は違いますか?

A9: 通常, 「本店」は会社の定款・登記で『本店』とされている場所(どこにしてもよい), 「本社」は, 会社の現実の事業活動の統括場所を意味します。両方が一致していることが多いのですが,異なる場合もあります[4](通常「本社」所在地の方がよく知られている)。異なる場合, 契約書上表示する住所としても両方あり得ますが, その契約当事者が特定できればどちらでも問題ありません[5]

 

Q10:押印のハンコは?

A10:契約書の押印に使うハンコ(印鑑・印章)については, いわゆる丸印(「○○○○株式会社代表取締役之印」等と刻印されている丸い形のハンコ)だけ, または, 更に角印(「○○○○株式会社之印」等と会社名のみ刻印されている四角いハンコ)も押印される場合もあります[6]

通例、丸印は、(その印影を照合する場合があるので), 会社名・契約締結名義人の文字列にかからないようその右横に押印され, 一方, 角印は(契約書改ざんがしにくいよう)それらの文字列にかかるようその右端または真ん中に押印されます。

なお, 丸印については, 契約締結名義人が「○○○○事業本部長」等であれば「○○○○株式会社事業本部長之印」等と刻印されている丸い形のハンコが使われることになります。

【解 説】

【角印の意味】上記の場合, 角印は, 契約書改ざんがしにくいようという意味の他, 「重々しさ付け」のような位置づけと言えます[7]。改ざん防止の効果は限定的なので,  丸印だけでも構いません。

【実印・認印】会社が契約書を含む対外的文書に使用するハンコ(以下「社印」と総称する)の内, 登記所(法務局)に代表取締役の印として届けたものを「実印」と呼ぶことがあります。この「実印」については, 登記所から, その会社の登記上の, 商号(会社名)/本店所在場所(住所)/代表者(代表取締役)氏名/および代表者生年月日が記載された「印鑑証明書」の交付を受けることができます。相手方から実印の押印および印鑑証明を要求される場合としては, 銀行との融資契約書や, (今後は変わるようですが)従来は官庁への提出文書の多くがそうでした。

相手方が一般の企業の場合の契約書では, 特に大企業等の場合契約名義人を代表取締役とすることは多くなく, 特に重要な契約である等のため代表取締役とする場合でも, 必ずしもその実印ではない丸印(いわば認印)が押印される場合もあり, また, 印鑑証明書の添付を要求されることは多くありません

実印は登記所に届け出た一つしかないので, 企業によっては, 実印の紛失・摩耗等を防止するため, 通常の取引には原則として認印を使用している場合もあります。

(代表取締役ではない)「○○○○事業本部長」等の丸印(一般に「役職印」と呼ぶ)も, 上記の「実印」ではないという意味で「認印」と呼ばれる場合があります。この印については実印(登記所届出印)が存在しないので, 当然, その印鑑証明というものもありません

 

Q11:電子契約の場合も印影(印を押したあと)がないといけない?

A11: 不要です。但し, 電子契約に人工的に印影を付すことができるサービスはあります。

【解 説】

紙の契約書の押印は, その印影があることにより確かに各当事者によりその契約書が作成されたことを証明しようとするものです。

しかし, 電子契約の場合は, 物理的な押印はあり得ないので, 当然その印影もありません。また, そもそも, 現在普及している多くのクラウドサービスを利用した電子契約では, 印影の存在以外の方法(各当事者の担当者・契約締結名義人等のメールアドレスの自動記録, そのサービス利用により付与される電子署名等)により上記の証明を行おうとするものです。従って, 印影は不要です。

しかしながら, 日本企業・日本人は長らくハンコ・印影に親しみそれを信頼していたので, 印影があれば安心する人がいることは間違いありません。そこで, 電子契約を自社に導入する際の社内の心理的抵抗, または, 相手方の心理的抵抗を和らげる等の目的で, 電子契約に人工的に印影を付すサービスを利用することはあります

 

Q12:そもそも電子契約は有効・適切?

A12: 現在普及している電子契約のクラウドサービスで定評のあるものを選択して利用する限り有効・適切でしょう。

【解 説】

筆者の以下の記事を参照して下さい。

クラウドサービスを利用した電子契約の有効性 ~ 法務省Q&Aを踏まえて ~」企業法務ナビ, 2020/07/22 – 特に「■ 法務省Q&Aを踏まえた結論」の部分。

 

今回はここまでです。

 

[8]                 

【注】                                   

[1] 【契約書の作成部数】通常は当事者の数だけ作成しますが, 請負契約書のように印紙税がかかる契約書の場合, 印紙税節約のため1部しか作成しない会社もあります。しかし, これは, 両当事者にとっての証拠としての契約書という観点から問題もあるのでここでは考慮しません。

[2] 【契約締結日の遡及(バックデート)と民法94条2項虚偽表示】 この場合, 契約書末尾の日付けと実際の契約締結日(それ自体がいつかという問題はありますが)が異なるので民法94条1項の「虚偽の意思表示」に該当し, 同項により, 契約は無効になるのではないかという疑問が生じるかもしれません。しかし, ここでの「虚偽の」とは「当事者の真意でない」という意味であり, 民法94条1項は, 両当事者とも真意でないことを了解している表示(通謀虚偽表示)に法律効果を認めるべき理由はないからこれを無効とするというものです。しかし, 通常の契約書末尾の日付けの遡及は, その日付け前の履行行為にその契約の規定を適用するという, 正に両当事者の真意を表すものですから, 虚偽表示として無効になることはないと解されます(勿論, 真意でない本来の虚偽表示に当たる場合は別ですが)。但し, これを気にするのであれば, 契約書末尾の日付は現実に近い日を記載し, 契約本文中に, 別途, 発効日(効力発生日)として, その契約の規定を適用する取引等の実行・開始の前の日を規定するという方法はあります。

[3] 【使用人の契約締結権限】(参考) 影山法律事務所「部長・課長がする契約の有効性~使用人の代理権(1)

[4] 【本店と本社の住所が異なる場合】事実確認はしていませんが, 以下の記事には異なる例が紹介されています。「本店と本社の違い」2016-09-26, 上場企業サーチ

[5]契約書上表示する住所(本店・本社)】契約書は権利義務に関する法的文書なので, 登記上の本店所在地の方を記載すべきだという見解もあるかもしれません。しかし, 登記と異なる実際の本社所在地を記載したとしても, その実際の本社所在地によりその契約当事者が特定できる限り, 契約の効力に影響が生ずることは考えられません。そもそも地方の支社長等が契約締結名義人の場合は登記上の本店所在地ではなくその支社等の住所を記載することも自然であることを考えれば, 裁判所がその契約は無効である等の判断をするとは考えられません。

[6] 【丸印, 角印, 実印, 認印のサンプル】 以下の印鑑ネット通販にサンプルがあります。会社印【ハンコヤドットコム】会社印の通販

[7] 【角印単独使用の場合および請求書印・見積書印】本文で挙げた角印(「○○○○株式会社之印」)が請求書等に単独で押印される場合もあります。この場合は, その角印の印影によりそれが会社の正式文書であることを示そうとしています。この他, 請求書や見積書専用に「○○○○株式会社請求書之印」, 「○○○○株式会社見積書之印」等の印影の四角い印(これも「角印」と呼ばれることが多い)が作成・使用されることもあります(最初に挙げた角印より悪用されるおそれが低い)。

 

[8]

 

==========

【免責条項】

本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害等について当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては, 自己責任の下, 必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

(*) このシリーズでは, 読者の皆さんの疑問・質問等も反映しながら解説して行こうと考えています。もし, そのような疑問・質問がありましたら, 以下のメールアドレスまでお寄せ下さい。全て反映することを保証することはできませんが, 筆者の知識と能力の範囲内で可能な限り反映しようと思います。

review「AT」theunilaw.com(「AT」の部分をアットマークに置き換えてください。)

 

 

【筆者プロフィール】

浅井 敏雄 (あさい としお)

企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事

1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を米系・日本・仏系の三社で歴任。1998年弁理士試験合格(現在は非登録)。2003年Temple University Law School (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事, 国際取引法学会会員, IAPP (International Association of Privacy Professionals) 会員, CIPP/E (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】

https://www.theunilaw2.com/

 

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