Q&Aで学ぶ英文契約書の基礎 第42回 -  保証(Warranty)条項(3):ソフトウェアの保証等

 

今回は、前回(機器の保証の解説)に続き、ソフトウェアの保証/保証期間の開始時期/第三者製品の保証に関し、その規定趣旨、顧客修正要求例、顧客修正要求への供給者側回答例を解説します。なお、条項例は、分かり易いように一文を分けて訳している個所があります。

 

【目  次】

(各箇所をクリックすると該当箇所にジャンプします)

Q1: ソフトウェアの保証について解説して下さい。

Q2: 保証期間の開始時期について解説して下さい。

Q3: 第三者製品の保証について解説して下さい。

 

Q1: ソフトウェアの保証について解説して下さい。

 

B. Software ソフトウェア

Supplier warrants that Supplier Software designated as warranted in the Price List, Quotation, or documentation accompanying the Supplier Software will substantially conform to[1] the applicable Software Product Description or documentation accompanying the Supplier Software

供給者は、「価格表」、「見積書」または「供給者ソフトウェア」付属のドキュメント上保証ありと表示されている「供給者ソフトウェア」が、該当の「ソフトウェア製品仕様書」または「供給者ソフトウェア」付属のドキュメントに実質的に適合することを保証する。①

provided any non-conformance is notified in writing to Supplier during the warranty period specified in the Price List, Quotation, or documentation accompanying the Supplier Software.

但し、当該不適合が、「価格表」、「見積書」または「供給者ソフトウェア」付属のドキュメントに定める保証期間中に供給者に書面で通知されることを条件とする。②

All Software not expressly designated as warranted is provided “AS IS”.

明示的に保証ありと表示されていない全ての「ソフトウェア」は「現状有姿」(AS IS)で提供される。

A1: この部分の規定趣旨等は以下の通りです。

【①の規定趣旨】 供給者が価格表等で保証ありと明示している「供給者ソフトウェア」だけが供給者により保証されることを明確化。「ソフトウェア製品仕様書」(Software Product Description)等には、そのソフトウェアの機能・動作環境等(例:対応OS・そのバージョン/CPU/必要メモリ・ハードディスク容量/必要周辺機器・ソフトウェア/ネットワーク環境)が記載されている。従って、「ソフトウェア製品仕様書」等に適合するとは、これら所定の動作環境のもとでこれら機能が正常に作動するという意味

【①に関する顧客修正要求例1】 「実質的に(substantially)」の部分削除。

【顧客修正要求への供給者側回答例】 不同意。「ソフトウェアは人間により開発されるため、全ての動作環境で正常に動作することを保証することは非常に困難であることが経験則として広く認識されている。ソフトウェアの供給者がそれを保証しなければならないとすれば、そのソフトウェアの開発・テストに非常に長期間および多大なコストを要し、ソフトウェアを永遠に市場に投入することはできず、顧客もそれを合理的な価格で調達・利用することはできない従って、供給者が「実質的な適合性」のみを保証し、ソフトウェアの重要かつ基本的な機能が損なわれた場合にのみ法的責任を負うこととするのが合理的である。」

“It is widely recognized as a rule of thumb that it is very difficult to warrant that software operates normally in any and all operating environments as it is developed by humans. If a supplier must warrant that, it will take a very long time and a lot of costs to develop and test the software, and the supplier will not be able to bring the software to the market forever, and customers will also never be able to obtain and use it at a reasonable price. Therefore, it is reasonable for the supplier to warrant only “substantial conformance” and be legally liable only if the important and basic functions of the software are impaired.

【①に関する顧客修正要求例2】 注文前に「ソフトウェア製品仕様書」等を入手・確認できることの保証。

【顧客修正要求への供給者側回答例】 定義の最後に次の規定挿入。

“Supplier shall, at any time, make Software Product Description, Service Description and Price List available to Customer or provide them upon Customer’s request.”

供給者は、いつでも、「ソフトウェア製品仕様書」、「サービス仕様書」、「価格表」を顧客が利用できるようにするか、または、顧客の要求に応じ提供しなければならない。

 

【②に関する顧客修正要求例等】 ソフトウェアの保証期間[2]の延長等の要求。⇒機器の保証期間(第41回Q2-②参照)と同様。

 

【③の規定趣旨】 供給者は価格表・見積書で保証対象としている「供給者ソフトウェア」のみ保証。供給者がサポートを終了したソフトウェア、「第三者ソフトウェア」その他供給者による保証対象外のソフトウェアは、「現状有姿」(すなわち保証なし)で提供されることを明確化。供給者は「第三者ソフトウェア」に対して保証を行わないが、第三者から買主に直接保証が行われる場合がある(価格表等で事前確認可能)。その保証条件は通常「第三者ソフトウェア」に同梱されている保証書等により確認可能。

【③に関する顧客修正要求例等】 全ての「ソフトウェア」について保証要求

【上記顧客修正要求への供給者側回答例】 不同意。

Certain software products, such as those which Supplier no longer supports but are still in demand are offered “AS IS” to meet such demand. Customers may use most of them on a trial basis without fee before ordering and may purchase technical support for some of them. Considering these, it is entirely the customer’s choice whether to order or not. Therefore, it is reasonable for Supplier to make no warranty on them.”

供給者がサポートしなくなったがまだ需要があるソフトウェア等、一定のソフトウェア製品は、そのような需要を満たすために「現状有姿」で提供される。顧客は注文前にそれらのほとんどを無償で試用でき、また、一部ソフトウェアに関しては技術サポートを購入できる。このようなことを考慮すれば、注文するか否かは完全に顧客の選択である。従って、供給者がそれらソフトウェアについて保証しないことは合理的である。」

 

Q2: 保証期間の開始時期について解説して下さい。

 

C. Commencement of Warranty 保証期間の開始時期

The above warranties will commence upon delivery of the Products.

上記保証期間は「製品」の納入と同時に開始される。

If the Product is installed by Supplier, the warranty period will be measured from the date of installation.

「製品」が供給者により設置される場合、保証期間はその設置日から計算される。

A2: この部分の規定趣旨は以下の通りです。

【規定趣旨】 「製品」(「機器」および「ソフトウェア」)には、供給者による設置が価格に含まれているものと、含まれていないものとがある後者については、供給者側では顧客による設置時期をコントロール・把握できないから、保証期間の開始時期を納入時としている。但し、前者の「製品」の場合、および、後者の「製品」で設置サービスが用意されているものについて顧客が「製品」購入時に設置サービスを購入した場合、すなわち、「製品」が供給者により設置される場合、保証期間はその設置日から計算される。

 

Q3: 第三者製品の保証について解説して下さい。

 

D. Service サービス

Supplier warrants that Services will conform to the applicable Service Description.

供給者は、「サービス」が該当の「サービス仕様書」に適合することを保証する。①

Supplier will not be responsible for compatibility of products not manufactured or supplied by Supplier.

供給者は、供給者が製造または提供していない「製品」の互換性について責任を負わない。②

A3: この部分の規定趣旨等は以下の通りです。

【①の規定趣旨】 「サービス仕様書」は、有償で提供される「サービス」(例:「機器」・「ソフトウェア」の保守・サポート、製品教育)に関し以下のような事項を記載したもの

(1)内容:「機器」の部品交換、「ソフトウェア」のバグ修正パッチ、アップデート、場合によりアップグレード版提供等。

(2)条件: 保守・サポート期間・その更新、時間帯、場所・方法(オンサイト/電話サポート)、対応までの時間等。

供給者は「サービス仕様書」に定める内容・条件に従い「サービス」を実施することを保証

【①に関する顧客修正要求例等】 「サービス」が”good and workmanlike manner”(または”in accordance with industry standards”)で履行されることの保証を要求。[“good and workmanlike manner“とはその事業者の属する業界における通常の作業基準を意味する[3]。従って、ここでは、コンピュータ供給者としての一般的作業水準という意味。民法(400等)上の「善管注意義務」(債務者の属する職業や社会的・経済的地位において取引上で抽象的な平均人として一般的に要求される注意義務)に類似した概念である。]

【上記顧客修正要求への供給者側回答例】 同意。以下文言に修正(下線部分追加)。[下線部分を追加しても実質的に注意義務等が荷重されるわけではないと判断]

“Supplier warrants that Services will conform to the applicable Service Description and will be performed in a good and workmanlike manner and in accordance with industry standards.

「供給者は、「サービス」が、該当の「サービス仕様書」に適合すること、および、適切な専門家の採用する方法および業界の標準に従って行われることを保証する。

 

Q4: 第三者製品の保証について解説して下さい。

 

E. Third Party Products 第三者製品

Supplier does not warrant Third Party Products, which Supplier distributes “AS IS” unless otherwise specified in the Price List, Quotation, or documentation accompanying the Third Party Products.

供給者は、「価格表」、「見積書」または「第三者ソフトウェア」付属のドキュメント上に別段の記載のない限り、供給者が販売する「第三者製品」を保証せず、これら「第三者製品」は「現状有姿」(AS IS)で提供される。

Third Party Products may be warranted by the third party as specified in the documentation accompanying the Third Party Products.

但し、「第三者製品」は、「第三者製品」付属のドキュメントに定めるところにより、当該第三者により保証される場合がある。

A4: この部分の規定趣旨等は以下の通りです。

【規定趣旨】 本契約上、供給者は顧客に対し、自社ブランド製品である「供給者製品」とともに、顧客からの個別要請に応じ「第三者製品」も提供することがある。しかし、「第三者製品」は、「価格表」等に掲載され「供給者製品」とほぼ同様に供給者による保証付きで提供されているものを除き、供給者からの保証はなく(供給者からは)「現状有姿」で提供される。

但し、「第三者製品」の内その第三者からの直接保証があるものについては、顧客はその直接保証を受けることができる。

【顧客修正要求例等】 「第三者製品」についても「供給者製品」と同様供給者自身による「供給者製品」と同様の保証要求。

【上記顧客修正要求への供給者側回答例】 不同意。

“Except for those listed in the Price List and provided with a warranty by Supplier, as Supplier does not develop the Third Party Products, it cannot make a warranty. It would be unreasonable that Supplier should bear a broader warranty obligation than the warranty given to the customer when it procures the Third Party Products directly from the third party.

「価格表に記載されかつ供給者による保証が提供されるものを除き、供給者は「第三者製品」を開発していないから保証することはできない顧客が「第三者製品」を直接その第三者から調達する場合に顧客に与えられる保証よりも広い保証義務を供給者が負うのは不合理である。」

 

今回はここまです。

 

「Q&Aで学ぶ英文契約の基礎」シリーズ一覧

[4]                 

【注】

 

[1] 【”….substantially conform to …” 】 この表現の他、”…… comply in all material respects with…..” 等の表現も一般的である。(参考)”Back to Basics: Non-IP Warranties” 2011-04-27

[2] 【ソフトウェアの保証期間】 後記参考資料によれば、COTS (commercially available off the shelf)ソフトウェア(市販ソフトウェア製品)では、一般的に30日~1年であり、90日間が最も多いとされる。(参考)”Back to Basics: Non-IP Warranties” 2011-04-27

[3] 【”good and workman-like manner”】 (参考)Anthony Murdock “WHAT DOES WORKMANLIKE MANNER MEAN?”  Construction  January 31, 2018, Murdock Law, S.C

[4]

==========

【免責条項】

本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害等について当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては、自己責任の下、必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

(*) このシリーズでは、読者の皆さんの疑問・質問等も反映しながら解説して行こうと考えています。もし、そのような疑問・質問がありましたら、以下のメールアドレスまでお寄せ下さい。全て反映することを保証することはできませんが、筆者の知識と能力の範囲内で可能な限り反映しようと思います。

review「AT」theunilaw.com(「AT」の部分をアットマークに置き換えてください。)

 

 

【筆者プロフィール】

浅井 敏雄 (あさい としお)

企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事

1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を米系・日本・仏系の三社で歴任。1998年弁理士試験合格(現在は非登録)。2003年Temple University Law School (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事、国際取引法学会会員、IAPP (International Association of Privacy Professionals) 会員、CIPP/E (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】

https://www.theunilaw2.com/

 

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