Q&Aで学ぶ英文契約書の基礎 第41回 -  保証(Warranty)条項(2):機器の保証

 

前回、具体的な保証(Warranty)条項の全体を示しました。今回から、保証(Warranty)条項の各部分ごとに、規定趣旨と契約交渉例(顧客修正要求例とそれに対する供給者側回答例)を解説していきます。なお、条項例は、分かり易いように一文を分けて訳している個所があります。

 

【目  次】

(各箇所をクリックすると該当箇所にジャンプします)

Q1: 定義の部分について解説して下さい。

Q2: 機器(Equipment)の保証について解説して下さい。

Q3: 保証内容を日本の民法のように「契約の内容」への適合とすることは?

 

 

Q1: 定義の部分について解説して下さい。

 

1. DEFINITIONS 定義

“Equipment” refers to Supplier and third party hardware products supplied by Supplier under this Agreement.

「機器」とは、本契約に基づき供給者が提供する供給者または第三者のハードウェア製品を意味する。

“Software” refers to Supplier and third party computer programs (including databases) supplied by Supplier under this Agreement.

「ソフトウェア」とは、本契約に基づき供給者が提供する供給者または第三者のコンピュータプログラム(データベースを含む)を意味する。

“Products” refers to Equipment and Software.

「製品」とは、「機器」および「ソフトウェア」を意味する。

“Supplier Equipment,” “Supplier Software” and “Supplier Products” refer respectively to Equipment, Software and Products supplied under Supplier’s brand name.

「供給者機器」、「供給者ソフトウェア」または「供給者製品」とは、それぞれ、供給者のブランド名のもとで提供する「機器」、「ソフトウェア」または「製品」を意味する。

“Third Party Equipment,” “Third Party Software” and “Third Party Products” refer respectively to Equipment, Software and Products other than Supplier Products.

「第三者機器」、「第三者ソフトウェア」および「第三者製品」とは、それぞれ、「供給者製品」以外の「機器」、「ソフトウェア」および「製品」を意味する。

“Services” refers to maintenance, support, or other services supplied by Supplier under this Agreement.

「サービス」とは、本契約に基づき供給者が提供する保守、サポートその他サービスを意味する。

“Software Product Description” and “Service Description” refer respectively to documents (including those provided electronically) which describe the attributes of specific Services and Software and which are in effect when Supplier accepts Customer’s order.

「ソフトウェア製品仕様書」および「サービス仕様書」とは、それぞれ、各「ソフトウェア製品」および「サービス」の特徴を記述したものであって、供給者が顧客の注文を承諾した時点で有効なドキュメント(電子的に提供されるものを含む)を意味する。

“Price List” refers to the applicable Supplier United States price list or catalog (including those provided electronically) in effect when Supplier accepts Customer’s order.

「価格表」とは、供給者が顧客の注文を承諾した時点で有効な、該当する供給者の米国での価格表またはカタログ(電子的に提供されるものを含む)を意味する。

“Quotation” refers to the applicable authorized Supplier quotation (including those provided electronically) in effect when Supplier accepts Customer’s order.

「見積書」とは、供給者が顧客の注文を承諾した時点で有効な正式な供給者の見積書(電子的に提供されるものを含む)を意味する。

A1: 定義部分の規定趣旨は以下の通りです。

【規定趣旨】 本契約は、供給者(Supplier)から顧客企業(Customer)に対するコンピュータとその周辺機器(「機器」:Equipment)、ソフトウェア(Software)およびそれらに関連するサービス(有償保守・サポート等)(Services)の販売・ライセンス・提供に関する契約です。機器、ソフトウェア、サービス、いずれも供給者の標準製品・標準サービスで、特注の機器・ソフトウェアの開発等は対象外です(別途開発契約等を締結して受託)。

本契約上、供給者は顧客に対し、自社ブランド製品(「供給者製品(Supplier Products)」)とともに、他社製品(「第三者製品(Third Party Products)」)も提供することがありますが、両製品はライセンス条件、保証条件等が異なるので別々に定義されています。

「ソフトウェア製品仕様書」(Software Product Description)、「サービス仕様書」(Service Description)、「価格表」(Price List)または「見積書」(Quotation)には、保証に関する基準・条件が記載されています。

「ソフトウェア製品仕様書」等は随時改訂(見積書は再提出)があり得ますが、それぞれ、供給者が顧客の注文を承諾した時点で有効なものが適用されます。

なお、本契約の一般条項に以下の規定があり、顧客はこれらを注文前およびいつでも確認できるようにされています。“All documents referred to in this Agreement are incorporated into this Agreement and are available from Supplier upon request.”(本契約上言及されているドキュメントは本契約の一部となり、また、要求により供給者から入手できるものとする。)

 

Q2: 機器(Equipment)の保証について解説して下さい。

 

8. WARRANTIES

 

A. Equipment 機器

Supplier warrants that Supplier Equipment will be free of defects in workmanship and material

供給者は、「供給者機器」に製造上および材料上の瑕疵がないことを保証する。①

provided such defects are notified in writing to Supplier during the warranty period specified in the Price List, Quotation, or documentation accompanying the Supplier Equipment.

但し、当該瑕疵が「価格表」、「見積書」または「供給者機器」付属のドキュメントに定める保証期間中に供給者に書面で通知されることを条件とする。②

A2: この部分の規定趣旨等は以下の通りです。

【①の規定趣旨】供給者機器」に関する保証です(「第三者機器」については別途規定)。“defects in workmanship and material”とは、製造物責任訴訟等でも使われる用語ですが、製造上の瑕疵(製品の製造・組立上の問題により生じた不具合)および材料が所定のものでなかったことを意味します。「設計上の瑕疵」(defects in design/design defects)は保証の対象外です。

【①に関する顧客修正要求例1】「設計上の瑕疵」を保証の対象とすること。

【供給者側回答例】 不同意(Not Agree)。(理由)「工業製品の設計には、技術上、コスト上、様々な選択肢があります。お客様からすれば、最善の設計をご希望とは思いますが、何が最善の設計であるかは画一的に決まるわけではありませんし、当然コスト上の制約があります。「設計上の瑕疵」には客観的な基準がなく、お客様が機器に対する事実上全ての不満を主張できる程広いと言えます。従って、供給者は「設計上の欠陥」がないことを保証することはできません。」

“There are various technical and cost options for designing industrial products. From the customer’s point of view, they will insist on the best design, but what is the best design is not uniformly determined, and of course, there are cost constraints. The “design defect” lacks objective criteria, and broad enough to allow customers to make claims for virtually any dissatisfaction with the Equipment. Therefore, Supplier cannot warrant that Equipment will be free of defects in design.”

【①に関する顧客修正要求例2】 特定の仕様への適合の保証追加。

【供給者側回答例】 以下提案(下線部分追加)。“Supplier warrants that Supplier Equipment will be free of defects in workmanship and material and will substantially conform to the specification referenced in the Customer’s order accepted by Supplier ……” (供給者は、「供給者機器」に製造上および材料上の瑕疵がなくかつ供給者が承諾した顧客の注文書上に記載された仕様書に実質的に適合することを保証する)

(説明) ここでは、供給者・顧客間で事前に仕様書が確認合意され顧客が注文書にその合意された仕様書の名称・番号等を記載することを想定しています。“substantially”(実質的に適合)としたのは、工業製品では常時品質・製造コスト改善のための設計変更がなされているので、些細なまたは機能に実質上影響しない仕様との食い違い等については保証しない(一部顧客だけのために仕様の厳格な固定はしないし顧客の利益にもならない)という考え方に基づきます。

【②の規定趣旨】 各機器の保証期間は機器により異なり、顧客は注文前に価格表等で確認することができます。

【②に関する顧客修正要求例】保証期間を全製品について一律の期間(例:1年)にすることを要求。

【供給者側回答例】不同意(Not Agree)。「機器の保証期間は、その機器の種類・業界の慣行・そのメーカ独自の方針に従い定まっています。供給者の保証期間は、1年より短い機器も1年より長い機器もありますが、それぞれの保証期間・保証コストを前提に機器の価格が設定されています。1年より短い機器に関しては、お客様には別途その不足期間について有償保守を購入する選択肢があります。」

“The warranty period of equipment is determined according to the type of the equipment, industry practices, and its manufacture’s policy. Supplier’s warranty period is shorter than one year for some Equipment and longer than one year for other Equipment. The price of each Equipment is set based on the warranty period and warranty costs. For Equipment with a warranty period shorter than one year, Customer has the option to purchase maintenance services.”

 

Q3: 保証内容を日本の民法のように「契約の内容」への適合とすることは?

A3: 不適切と思われます。

【解 説】

顧客が日本企業の場合、日本の民法上、売主の売買目的物に関する責任は、その目的物が「契約の内容」に適合することに対する責任であること(562以下)、UCC上も、契約書によるものを含め、売主による事実確認・約束等により明示の保証が生じる(UCC 2-313)とされている(第39回Q3参照)ことから、そのまま「契約の内容」への適合の保証を要求したくなるかもしれません。

しかし、法務省の「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明」(2013年4月)(p 89, 397~)によれば、この「契約の内容」(中間試案では「契約の趣旨」)は、「合意の内容や契約書の記載内容だけでなく,契約の性質(有償か無償かを含む。),当事者が当該契約をした目的,契約締結に至る経緯を始めとする契約をめぐる一切の事情に基づき,取引通念を考慮して評価判断されるべきものである」とされています。従って、「契約の内容」に適合すると規定しても具体的にはどのような意味なのか明確ではありません。

また、UCC上も、事実確認・約束/説明/見本・モデル等様々なものから生じる明示の保証と、自動的に生じる黙示の保証が契約の内容の一部となると考えられます。従って、やはり、「契約の内容」に適合すると規定しても具体的にはどのような意味なのか明確ではありません。

民法の規定やUCCの規定は、当事者間で契約書も取り交わさずに取引した場合の解釈基準としては有用かもしれませんが、契約書を取り交わすことを前提とする場合には、単に「契約の内容」に適合する(ことを保証する)と規定することは、契約の紛争予防機能からも不適切です。

従って、売主だけでなく買主にとっても、目的物について具体的に一体何を保証するのか/何が保証されているのかを明確にするために、単なる「契約の内容」ではなく、特定の仕様書など客観性・具体性のあるものに適合することを保証の内容とすべきです。

 

今回はここまです。次回はソフトウェアの保証から解説していきます。

 

「Q&Aで学ぶ英文契約の基礎」シリーズ一覧

 

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【注】

 

 

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【免責条項】

本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害等について当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては、自己責任の下、必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

(*) このシリーズでは、読者の皆さんの疑問・質問等も反映しながら解説して行こうと考えています。もし、そのような疑問・質問がありましたら、以下のメールアドレスまでお寄せ下さい。全て反映することを保証することはできませんが、筆者の知識と能力の範囲内で可能な限り反映しようと思います。

review「AT」theunilaw.com(「AT」の部分をアットマークに置き換えてください。)

 

 

【筆者プロフィール】

浅井 敏雄 (あさい としお)

企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事

1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を米系・日本・仏系の三社で歴任。1998年弁理士試験合格(現在は非登録)。2003年Temple University Law School (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事、国際取引法学会会員、IAPP (International Association of Privacy Professionals) 会員、CIPP/E (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】

https://www.theunilaw2.com/

 

 

 

   

 

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