Q&Aで学ぶ英文契約書の基礎 第37回 -  変更契約

 

国内の契約でも同じですが、契約締結後その内容の変更が必要になることがあります。今回は英文契約の変更契約について解説します。[1]

【目  次】

(各箇所をクリックすると該当箇所にジャンプします)

Q1: 変更契約の形式は?

Q2: 変更契約の記載事項は?

Q3: 変更契約のサンプルは?

Q4: 変更内容の規定方法は?

Q5: 変更をスマートに行う工夫は?

 

 

Q1: 変更契約の形式は?

A1: 国内の変更契約と同様、形式上・文言上の決まりはありません。変更の意思および内容が明確であれば形式を問いません。例えば、Letter Agreement[2]形式の変更契約も可能です。また、”Whereas ~”等を含む伝統的形式でも、より簡易な形式でも構いません。

但し、原契約には、通常、”No modification of this Amendment shall be binding unless executed in writing by both Parties.”(「本契約のいかなる変更も、両当事者が署名した書面によらない限り、拘束力がないものとする。」)との規定があります(第17回参照)。また、英米法上の詐欺防止法[3]、後の紛争防止・立証等、契約一般に共通する理由からも、契約の変更は書面で行うべきです。

 

Q2: 変更契約の記載事項は?

A2: これも国内の変更契約と同様、主に以下の通りです。

①原契約の特定

②(もしそれがあれば)以前の変更についての言及

③(必要に応じ)変更に至った経緯

④変更内容

⑤(必要に応じ)変更契約上の用語の定義(通常、原契約の定義と同じと規定)

⑥変更対象外の規定の効力存続

⑦変更の効力発生日

 

Q3: 変更契約のサンプルは?

A3: 以下に示します。

 

①AMENDMENT TO … AGREEMENT

… 契約変更契約

This AMENDMENT TO … AGREEMENT (this “Amendment”), made and entered into as of … by …, a corporation duly organized and existing under the laws of …, having its principal offices at … (“ABC”) and …, a corporation duly organized and existing under the laws of …, having its principal offices at …(“XYZ”),

WITNESSETH:

この「…契約変更契約」(「本変更契約」)は、…の法律に基づき設立され …に主たる事業所を有する …(「ABC」)と、…の法律に基づき設立され…に主たる事業所を有する…(「XYZ」)との間で、…日付けで締結され、以下の事項を証する。

WHEREAS, ABC and XYZ (collectively the “Parties” and respectively the “Party”) entered into “… Agreement” dated …, and thereafter amended that agreement by “…” dated … and “…” dated …;

ABCおよびXYZ(総称して「両当事者」と、それぞれを「当事者」という)は、…日付け「…契約」を締結し、②その後当該契約を…日付け「…」および…日付け「…」により変更した。

and そして

WHEREAS, the Parties desire to further amend the “… Agreement” as amended as above (the “Original Agreement”), a copy of which is attached hereto as Exhibit A,

両当事者は、③上記の通り変更された当該「…契約」(「原契約」)(その写しを別紙Aとして本変更契約に添付)を更に変更することを望んでいる。

NOW THEREFORE, in consideration of the mutual promises contained herein, the Parties agree as follows:

そこで、本変更契約に定める相互の約束を約因として、両当事者は、次の通り合意する。

 

1. The Parties agree to amend the Original Agreement as follows:

両当事者は、原契約を以下の通り変更することに合意する。

④(Q4以下で解説)

2. Capitalized terms used and not otherwise defined in this Amendment shall have the same meanings as defined in the Original Agreement.

本変更契約において使用されかつ別段の定義がない頭文字が大文字の用語は、原契約で定義する意味を有する。

3. All other terms and conditions of the Original Agreement that are not amended by this Amendment shall remain unchanged and in full force and effect.

本変更契約により変更された以外の原契約の契約条件は、変更されずそのまま全面的に有効に存続する。

4. This Amendment shall become effective as of the date first above written.

本変更契約は、頭書記載の日付で効力を生じる。

 

IN WITNESS WHEREOF, the Parties have caused this Amendment to be executed by their duly authorized representatives as of the date first above written.

本変更契約を証するため、両当事者は、頭書の日付で、それぞれの正当に授権された代表者をして本契約に署名せしめた。

(以下署名欄省略)

【解 説】

①変更契約の名称: “AMENDMENT TO …(原契約名称)”が一般的です。

②以前の変更: この変更契約では既に2回変更がなされたことを前提としています。

③「原契約」: 上記2回の変更後の最新の状態の契約を「原契約」と呼び、それに対しこの変更契約で更に変更をすることとしています。このように変更が繰り返されると最新の状態がどうなっているか分かり難くなるので、また、後で原契約を探す必要がないよう、原契約をこの変更契約の別紙として添付することとしています。

④変更内容: ここに一番肝心な変更内容を規定することになりますが、Q4で解説します。 

⑤原契約の定義の流用: 変更内容を含め、変更契約中で使用する用語も原則として原契約と同じにすべきですが(そうしないと混乱が生じ易い)、ここで、このことを明確にしています。

⑥変更対象外の規定の効力存続: 確認的規定です。

⑦変更の効力発生日: この日以降変更が適用されます。

 

Q4: 変更内容の規定方法は?

A4: 以下に例を示します(一部のみ訳)

 

【例1】 変更箇所のみについて変更内容を記述する方法

The first sentence of Article 10 of the Original Agreement shall be amended by replacing “one year” with “two years.”(原契約第10条第一文は、「1年間」を「2年間」に置き換えることにより変更される) The second sentence of Article 10 of the Original Agreement shall be amended by replacing “one month” with “three months.”

【例2】 変更箇所を含む条項全体について変更後の条文を記載する方法

Article 10 of the Original Agreement shall be replaced in its entirety by the following: (原契約第10条は、その全体が以下の通り置き換えられる)

“ARTICLE 10. TERM OF AGREEMENT. This Agreement shall come into force on the Effective Date, and, unless sooner terminated, shall continue in full force and effect for one year from the Effective Date. Thereafter, this Agreement shall be renewed automatically for successive periods of one year each, unless terminated by either Party giving written notice of non-renewal to the other Party at least three months prior to the last day of the then current term.”

【例3】 変更箇所を含む条項全体について変更後の条文を取消線・下線付きで記載する方法

Article 10 of the Original Agreement shall be amended by the following additions (indicated by underlining) and deletions (indicated by strikethroughs): (原契約第10条は、以下の追加(下線で表示)および削除(取消線で表示)により変更される)

“ARTICLE 10. TERM OF AGREEMENT. This Agreement shall come into force on the Effective Date, and, unless sooner terminated, shall continue in full force and effect for one year two years from the Effective Date. Thereafter, this Agreement shall be renewed automatically for successive periods of one year each, unless terminated by either Party giving written notice of non-renewal to the other Party at least one month three months prior to the last day of the then current term.”

【例4】 原契約にはないある程度まとまった条項を追加する場合

The following provisions shall be added in the Original Agreement after Article 10 and before Article 11 thereof:(次の規定を原契約にその第10条と第11条の間に追加する)

Article 10-2. …(省略)”

【解 説】

【例1】(長所)変更契約書を短くできる。(短所)原契約を見ないと変更内容が分からない。

【例2】(長所)変更後の条項全体が分かる。(短所)原契約を見ないと、どこがどう変更されたのか分からない。

【例3】(長所)どこがどう変更されたのか分かり易い。(短所)変更箇所が多いと見にくい。

上記の通り、それぞれに長所・短所があります。変更内容に合わせ適宜選択すればいいでしょう。

 

Q5: 変更をスマートに行う工夫は?

A5: 一つの工夫として、価格等、将来変更される可能性のある事項については、原契約締結時からその別紙にまとめて規定しておく方法があります。最初にこのようにしておくと、実際に変更が生じた場合でも、変更契約中で以下のように規定し、また、契約の最新の状態は、その変更後の別紙を見るだけで済みます。

 

Exhibit A of the Original Agreement shall be replaced in its entirety by the one attached to this Amendment.

原契約の別紙Aはその全体が本契約添付のものに置き換えられる。

 

今回はここまです。

 

「Q&Aで学ぶ英文契約の基礎」シリーズ一覧

[1]                 

【注】

[1] 【本稿の主な参考資料】

・ 山本 孝夫「英文ビジネス契約書大辞典 〈増補改訂版〉」2014年 日本経済新聞出版社(「山本」) p 1059~1064.

・ 宮田 正樹「営業現場で使える!英文契約書のポイント – 第11回 契約条項の変更交渉と変更契約書の締結」 2018年02月19日, Business Lawyers)

・ Nolo “Amending an Existing Contract” MH Sub I, LLC dba Nolo

[2] 【Letter Agreement】 (参考)弁護士法人クラフトマン「レターアグリーメントの意味と目的

[3] 【英米法上の詐欺防止法】 詐欺防止法(statute of frauds)とは、一定の種類の契約を締結するためには、契約当事者が署名した書面を作成しなければならないとする英米法諸国の法律である。(参考)Legal Information Institute(LII), Cornell Law School ”Statute of frauds

[1]

==========

【免責条項】

本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害等について当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては、自己責任の下、必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

(*) このシリーズでは、読者の皆さんの疑問・質問等も反映しながら解説して行こうと考えています。もし、そのような疑問・質問がありましたら、以下のメールアドレスまでお寄せ下さい。全て反映することを保証することはできませんが、筆者の知識と能力の範囲内で可能な限り反映しようと思います。

review「AT」theunilaw.com(「AT」の部分をアットマークに置き換えてください。)

 

 

【筆者プロフィール】

浅井 敏雄 (あさい としお)

企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事

1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を米系・日本・仏系の三社で歴任。1998年弁理士試験合格(現在は非登録)。2003年Temple University Law School (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事、国際取引法学会会員、IAPP (International Association of Privacy Professionals) 会員、CIPP/E (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】

https://www.theunilaw2.com/

 

 

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