Q&Aで学ぶ英文契約書の基礎 第35回 -  「契約終了の効果」条項

 

販売店契約、ライセンス契約などでは、契約が終了した場合、以下のような点についてどう扱うかの問題があります。

①基本契約に基づき成立した個別契約で引渡し・支払等が完了していないものの取扱い

②契約終了時点の在庫品・仕掛品の取扱い

③提供済み資料等の取扱い

英文国際契約では、これらの問題を、一般に”Effect of Termination”などのタイトルの条項(以下「契約終了の効果」条項という)で扱っています。

今回は、販売店契約を例に、「契約終了の効果」条項について解説します。[1]

Q1: 販売店契約における「契約終了の効果」の条項例は?

A1: 以下に示します。

 

ARTICLE X   EFFECT OF TERMINATION  契約終了の効果

X. 1 When this Agreement is terminated by the expiration of the term of this Agreement (including its renewal term):

本契約が本契約の契約期間(更新期間を含む)の満了により終了した場合

(a) All outstanding sales contract(s) made under this Agreement shall be carried out pursuant to the terms of this Agreement even after the termination;

本契約に基づき締結された全ての未履行の売買契約は、本契約の終了後も、本契約の条件に従い履行されなければならない

(b) If the Product is in its stock at the time of the termination or if there are the Products delivered after the termination, Distributor may sell those Products pursuant to the terms of this Agreement within three (3) months after the termination or the last delivery after the termination, whichever is later; and

販売店は、契約終了時点で製品の在庫がある場合または契約終了後に引き渡された製品がある場合には、契約終了または契約終了後の最後の引渡し、いずれか遅い方から3カ月以内に、本契約に定める条件に従いこれらの製品を販売することができる

(c) Distributor shall return to Seller the pamphlets and other promotional materials left in hand which have been provided by Seller, within ten (10) days after the last sale of the Products.

販売店は、製品の最後の販売後10日以内に、売主から提供されたパンフレットその他販売促進資料で手元に残っているものを売主に返却しなければならない

 

X.2 When this Agreement is terminated by Seller due to the cause specified in Y.1:

本契約がY.1に定める原因[契約違反・破産申立・支配権の変更など]により売主により途中解除された場合、

(a) Seller may cancel all or any part of the outstanding sales contracts made under this Agreement, in which case the sales contracts not canceled shall be carried out pursuant to the terms of this Agreement even after the termination;

売主は本契約に基づき締結された未履行の売買契約の全部または一部を解除することができる。この場合、解除されなかった売買契約は、本契約の終了後も、本契約の条件に従い履行されなければならない。

(b) Distributor shall immediately discontinue the sale of the Products, provided, however, that if Seller otherwise instructed, Distributor shall comply with the instruction;

販売店は、直ちに製品の販売をやめなければならない。但し、売主が別段の指示をした場合はその指示に従わなくてはならない。

(c) If the Product is in Distributor’s stock at the time of the termination or if there are the Products delivered after the termination, Seller may purchase all or any part of those Products in good condition, at      percent (   %) of the price by which Distributor has purchased the same from Seller, on     basis;

契約終了時点で販売店に製品の在庫がある場合または契約終了後に引き渡された製品がある場合には、売主は、良好な状態にあるそれら製品の全部または一部を、販売店が売主から購入した価格の80%の価格で、   (引渡し条件)で買い戻すことができる

(d) Except for the Products which are authorized to be sold under (b) above or which Seller will purchase under (c) above, Distributor shall, in accordance with Seller’s instructions, destroy remaining Products and provide Seller with a document by which an authorized representative of Distributor certifies all remaining Products have been destroyed; and

上記(b)に基づき販売されることが認められた製品または上記(c)に基づき販売者が購入する製品を除き、販売店は、売主の指示に従い、残りの製品を破棄し、かつ、販売店の権限ある代表者がそのような製品は全て廃棄されたことを証明する書面を売主に提出しなければならない。

(e) Distributor shall, in accordance with Seller’s instructions, return to Seller the pamphlets and other promotional materials left in hand which have been provided by Seller.

販売店は、売主の指示に従い、売主から提供されたパンフレットその他販売促進資料で手元に残っているものを売主に返却しなければならない

 

X.3 When this Agreement is terminated by Distributor due to the cause specified in Y.1:

本契約がY.1[契約違反・破産申立・支配権の変更など]に定める原因により販売店により途中解除された場合、

(a) Distributor may cancel all or any part of the outstanding sales contracts made under this Agreement, in which case the sales contracts not canceled shall be carried out pursuant to the terms of this Agreement even after the termination; and

販売店は本契約に基づき締結された未履行の売買契約の全部または一部を解除することができる。この場合、解除されなかった売買契約は、本契約の終了後も、本契約の条件に従い履行されなければならない。

(b) If the Product is in its stock at the time of the termination or if there are the Products delivered after the termination, Distributor may choose either or both of the following for all or any part of those Products.

販売店は、契約終了時点で製品の在庫がある場合または契約終了後に引き渡された製品がある場合には、それら製品の全部または一部に関し、以下のいずれかを選択することができる

(i) to have Seller purchase them at the price by which Distributor has purchased the same from Seller, on      and “as is” basis, or

売主に、販売店が売主から購入した価格で、   (引渡し条件)かつ「現状有姿」で購入させること。

(ii) to sell or otherwise dispose of those Products;

これらの製品を販売その他処分すること

【解説】

上記条項例では、①契約期間満了(X.1)、②売主による契約解除(販売店側の契約違反・破産申立・支配権変更など)(X.2)、③販売店による契約解除(販売店側の契約違反・破産申立・支配権変更など)(X.3)の3つのケース[2]に分けて規定しています。

①の契約期間満了の場合(X.1)は、売主・販売店どちらかに非があるわけではないいわば平和的終了の場合なので、次の通りとしています。

(a) 未履行の個別契約はそのまま履行。

(b) 販売店の在庫などについては契約終了後も一定期間の販売を認める。

(c) 売主から販売店に提供された販促資料等は最後の販売後に返却させる。

 

②の売主による契約解除の場合(X.2)は、販売店側に非があるなどの場合なので、次の通りとしています。

(a) 売主は未履行の個別契約を解除できる。自動的に解除としなかったのは、販売店からの販売先が決まっていてその販売を認めた方がよいなどの場合があり得るからです。

(b) 販売店は原則として直ちに販売をやめなければならない。

(c) 売主は、その選択で、販売店の在庫を買い戻すことができる。

(d) 販売店は、売主の指示に従い、残りの製品を廃棄しなければならない。

(e) 販売店は、売主の指示に従い、販売促進資料を廃棄または返却しなければならない。

 

③の販売店による契約解除の場合(X.3)は、売主側に非があるなどの場合なので、次の通りとしています。

(a)販売店は未履行の売買契約を解除することができる。これも自動的に解除としなかったのは、販売店からの販売先が決まっていてその販売が必要な場合があり得るからです。

(b)販売店は、その選択で、在庫などを、(i)売主に買い戻しさせるか、または、(ii)自分で販売またはその他処分することができる。

 

なお、上記の条項例では、両当事者に公平に3つ全てのケースについて規定していますが、自社側の契約案としては、または、どちらかの当事者の契約交渉上の立場が強い場合は、①の他は、②または③いずれかしか規定しない場合も多いと思われます。

 

今回はここまでです。

 

「Q&Aで学ぶ英文契約の基礎」シリーズ一覧

[3]                 

【注】

[1] 【本稿の主な参考資料】

・ 宮田 正樹「英文契約書ハンドブック」日本能率協会マネジメントセンター (2016/9/25)(「宮田」) p 134-135, 176-177, 203-204

・ 山本 孝夫「英文ビジネス契約書大辞典 〈増補改訂版〉」2014年 日本経済新聞出版社(「山本」) p 501,502.

・ 大貫 雅晴「英文販売・代理店契約―その理論と実際」同文舘出版 (2015/2/27) p 125-128

・ 大貫 雅晴「国際技術ライセンス契約」同文舘出版 (2015/4/7) p 187-189

・ 浅井敏雄「国際技術ライセンス契約」(河村寛治他編「グローバルビジネスロー基礎研修 2 知的財産編」レクシスネクシス・ジャパン (2016/10/24)(「浅井」) p 468-469

[2] 【3つのケース】 他に、(a) 合意解除のケース、および、(b) (販売店契約ではあまり考えられないが)どちらかの当事者または両当事者に無理由の解除権が与えられている場合のその無理由解除による契約終了のケースが考えられる。しかし、(a)の合意解除の場合は、その合意の中で自由に、未履行の個別契、在庫などの取扱いを決めることができるから予め契約上規定しておく必要がない。(b)の無理由の解除が規定されている場合は、基本的に契約期間満了の場合と同様に取り扱えばよいと思われる。

[3]

==========

【免責条項】

本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害等について当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては、自己責任の下、必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

(*) このシリーズでは、読者の皆さんの疑問・質問等も反映しながら解説して行こうと考えています。もし、そのような疑問・質問がありましたら、以下のメールアドレスまでお寄せ下さい。全て反映することを保証することはできませんが、筆者の知識と能力の範囲内で可能な限り反映しようと思います。

review「AT」theunilaw.com(「AT」の部分をアットマークに置き換えてください。)

 

 

【筆者プロフィール】

浅井 敏雄 (あさい としお)

企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事

1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を米系・日本・仏系の三社で歴任。1998年弁理士試験合格(現在は非登録)。2003年Temple University Law School (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事、国際取引法学会会員、IAPP (International Association of Privacy Professionals) 会員、CIPP/E (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】

https://www.theunilaw2.com/

 

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