ゼロから始める企業法務(第15回)/ビジネスへの法務的アプローチ

皆様、こんにちは!堀切です。

これから企業法務を目指す皆様、念願かなって企業法務として新たな一歩を踏み出す皆様が、法務パーソンとして上々のスタートダッシュを切るための「ノウハウ」と「ツール」をお伝えできればと思っています。今回はビジネスへの法務的アプローチについて記事にしたいと思います。

 

ビジネスに近い相談がされるのは、信頼されている証

法務としての業務にも慣れ、ビジネスサイドとの関係が築けてくると、契約書や法務相談とは若干異なる、どちらかと言えばビジネスに近い相談も飛んでくるようになります。例えば、アプリのB to Cビジネスで言えば「アプリ初期設定のUIはどの様な仕様が良いでしょうか?」や「ユーザーにキャンペーンのお知らせメールを送りたいのですが、内容をチェックしてもらえますでしょうか?」等の相談です。法務としては、専門外の分野については、「ビジネスマターなので・・・」とか「ユーザーからの炎上が無ければ・・・」等の、歯切れの悪い回答に終始してしまうこともありますが、ビジネスに近い相談が来るということは、ビジネスサイドから信頼されている証でもありますので、仮に100%ビジネス的な相談であったとしても、ビジネスサイドとの良好な関係を維持するためにも、他社事例を調べる等、可能な限り積極的な対応を取ると良いと思います。

 

法的な論点は意外なところに存在する

実際には、一見してビジネスに関する相談にも、法的な論点が存在する場合が多いです。例えば、「アプリ初期設定のUIの仕様」には、「規約への同意方法」という論点があります。

これについては、経済産業省が出している「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」https://www.meti.go.jp/press/2017/06/20170605001/20170605001-1.pdfの「Ⅰ-2-1 ウェブサイトの利用規約の契約への組入れと契約締結後の規約変更」に、

 

 

(サイト利用規約が契約に組み入れられると認められる場合)

・例えばウェブサイトで取引を行う際に申込みボタンや購入ボタンとともに利用規約へのリンクが明瞭に設けられているなど、サイト利用規約が取引条件になっていることが利用者に対して明瞭に告知され、かつ利用者がいつでも容易にサイト利用規約を閲覧できるようにウェブサイトが構築されていることによりサイト利用規約の内容が開示されている場合

 

・ウェブサイトの利用に際して、利用規約への同意クリックが要求されており、かつ利用者がいつでも容易にサイト利用規約を閲覧できるようにウェブサイトが構築されていることによりサイト利用規約の内容が開示されている場合

 

 

以上のとおり規定されています。この準則を確認していないまま、ビジネスサイドから「規約への同意画面でチェックボックスを入れない様にしたい」との要望があった場合は、「ユーザーから「同意していない」と言われない様にするためにも、チェックボックスは入れた方がいいと思います。」等の、根拠の無い回答になっていまいますが、この準則を確認していれば「この準則に沿った仕様にすれば、チェックボックスを入れなくても大丈夫です。」と、明確な根拠と共に、ビジネスサイドの要望に沿った回答ができます。

 

また、「ユーザーに送るキャンペーンのお知らせメールの内容」については、消費者庁が出している「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/pdf/m_mail_081114_1.pdf

が関係します。このガイドラインでは、「電子メールを送信する者が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールを」を「特定電子メール」と定義し、「特定電子メール」は「あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者に対し通知した者」に限り、送信できることになっております(オプトイン規制)。また、特定電子メールの内容には、「配信停止を通知することができる旨」と、「配信停止の通知を受けるための電子メールアドレス又はURL」や「送信者の住所、苦情・問合せ等を受け付けることのできる電話番号、電子メールアドレス、URL」を記載する必要があります(オプトアウト規制)。ですので、まずはサービスの仕様が、ユーザーが「キャンペーン等の広告宣伝メールを送信するように求めた又は送信することに同意した」場合にキャンペーンメールを送る仕様になっているか確認すると共に、キャンペーンメールには、このガイドラインp.27に記載の以下の内容を追記する様、伝える必要があります。

 

もし、このガイドラインを確認していないまま、ビジネスサイドからの質問に回答すると、「ユーザーにとって必要な情報が記載されていれば問題ないと思います。」等の曖昧な回答になり、最悪の場合は、ビジネスを違法な状態にミスリードすることになってしまいます。

 

この様に、一見ビジネスマターに見える相談についても、しっかりと法的な論点を確認することは、法務相談に対する精度を上げ、ひいては、ビジネスの適法性を担保するためにも、重要になります。

 

その他にも、例えば個人情報保護関連では、カメラで撮影した画像の利活用について、経済産業省からガイドブックhttps://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180330005/20180330005-1.pdf 1が出されており、その中で、カメラで取得した画像が個人データになる場合や、その際の事前告知文面例等、詳細に記載がなされております。このとおり、各省庁が、法律に基づく実務上の取り扱いについて、準則やガイドラインを出していることもありますので、一見ビジネスマターの相談でも、丹念に調査すると、法的な論点にたどり着ける場合もあるかと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか。皆様がこれから取り組む業務に少しでもお役に立てるヒントがあれば幸いです。

 

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本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

 

 

【筆者プロフィール】
堀切一成

私立市川中学校・高等学校、専修大学法学部法律学科卒業。
通信機器・材料の専門商社で営業に 7 年間従事した後、渉外司法書士事務所勤務を経て法務パーソンに転身。
JASDAQ上場ITベンチャー、東証一部上場インターネット広告会社、スマホゲーム開発会社、Mobilityベンチャーでの法務、経営企画等に従事後、現在はライブ動画配信プラットフォーム提供ベンチャー初の法務専任者として日々起こる法務マターに取り組んでいます。

 

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