ゼロから始める企業法務(第12回)/法務の業務フロー構築方法

記事広告:『終身雇用終焉後の法務キャリア

皆様、こんにちは!堀切です。

これから企業法務を目指す皆様、念願かなって企業法務として新たな一歩を踏み出す皆様が、法務パーソンとして上々のスタートダッシュを切るための「ノウハウ」と「ツール」をお伝えできればと思っています。今回は法務の業務フロー構築方法についてお話いたします。

 

法務の日常業務で重要なこと

法務の日常業務で重要なことは、何でしょうか。こちらの権利を守り、相手方の義務を促す適切な内容の契約書を作成することや、事業部が気づかない法的なリスクを指摘し、解決方法を検討、提案することも、もちろん重要ですが、一番重要なのは、「ボールを取りこぼさない」ことだと思います。

ボールを取りこぼすとは、事業部等から契約書その他の法務案件に関する相談がなされているにも関わらず、それに気付かず、または案件の数に対して対応できる法務のリソースが足りておらず、対応が遅れてしまうことです。

ボールを取りこぼしてしまうと、ビジネスローンチが遅れる原因となり、事業部に迷惑をかけてしまうことになります。法務の日常業務では、常に手許のボールを把握、管理し、落ちているボールがあれば拾い上げ、適切な納期で事業部に投げることが重要です。

そのためには、法務の日常業務が円滑に回るフローを構築する必要があります。具体的には、以下の様な工夫をすると良いと思います。

 

●窓口の一本化

法務案件でボールを取りこぼさない様にするためには、まずは窓口となるコミュニケーションツールの一本化が重要となります。

現在では、eメールの他にも、slackやMessenger、LINE等、多くの企業で複数のコミュニケーションツールが使われています。また、企業が利用しているグループウェアやタスク管理ツールにもコミュニケーション機能が存在し、利用されているかと思います。複数のコミュニケーションツールを利用するのは、簡易、迅速な意思疎通ができて便利なのですが、こと法務の相談案件に関して言えば、案件が散逸し、取りこぼしの原因になることがあります。

ですので、まずは法務の案件相談はeメールの特定のエイリアス宛に送信する、slackの特定のチャネルに投稿する等、窓口を一本化し、社内に周知することが重要となります。

 

●ステータス管理

次に重要なのは、ステータス管理です。

各法務案件が、「未着手」「法務確認中」「回答済」「先方からの戻し確認中」「双方合意」「契約稟議申請中」「当方押印済」「双方押印・原本回収」のいずれのステータスなのかを把握し、管理できる状態にできると良いと思います。

そうすれば、例えば「未着手」の案件を「先方からの戻し確認」よりも先に処理するといった、優先順位付けや、「双方合意」し、ビジネスローンチが近いのに「契約稟議申請」がなされていないので事業部にリマインドするといった、進捗管理が可能になります。

 

●ヒアリング事項のフォーマット化

複数のスタッフで法務業務を行う場合は、ある程度一定の業務品質を保つことも重要です。

例えば相手方から提示を受けた契約書の修正案件において、適切なヒアリングとアウトプットの提出をするAさんに比べ、Bさんはヒアリング事項に抜け漏れが多く、アウトプットも粗い、逆にCさんはヒアリング事項が細かすぎ、アウトプットも必要以上の修正がなされて、契約締結まで時間が掛かるといった状況では、事業部も困惑してしまいます。

業務品質を一定に保つためには、契約書の作成、審査、修正事項に関する基準やマニュアルを作成し、共有する等の方法が考えられますが、特にヒアリング事項については、あらかじめフォーマットを定め、法務案件の受付時に提示することが、業務品質を保つのに有効かと思います。

 

●過去案件の検索

過去案件の検索が容易なことも重要です。特に、複数のスタッフで法務案件に対応する場合には、過去案件を担当者以外のスタッフも容易に検索、共有できることで、類似の法務案件に対応する際の工数の削減が可能となります。

また、過去に弁護士等に相談した内容やその結果が検索できれば、プロフェッショナルフィーの削減にもつながります。

検索容易性を上げるには、例えば件名を、日付、案件名、相手先名の並びで統一する方法や、依頼を受けた契約案件順にナンバリングし、契約書管理簿の番号と紐づける等の方法が考えられます。また、例えばeメールだと新たに加入した法務パーソンは過去案件を検索できない等、利用するツールによって検索容易性が異なるのも悩ましいところだと思います。

 

社内ワークフローの活用

以上の様な工夫を業務で実現する方法として、皆様の会社が、社内手続き、申請等にワークフロー(以下「WF」)を導入しているのであれば、社内のWFに「法務相談」の申請フォーマットを設けると良いと思います。

社内のWFを活用することで、まずは法務相談の窓口を一本化することができ、複数のツールで法務案件に対応する手間が省けます。次に、WF内で、担当者と契約書の修正案の提示や先方からの戻しの確認等のやり取りを行うことにより、ステータス管理も可能となります。また、WFに予め「背景・目的」「関連するビジネスの概要」「プレゼン資料やスキーム図等の参考資料」「契約条件の骨子」「経済条件」「懸念する事項」等の入力欄を定め、事業部の担当者が適宜必要な情報を入力しないと申請ができない様にすることで、ヒアリング事項のフォーマット化も可能になります。さらに、法務相談WFの閲覧権限を法務スタッフ全員に付与することで、社歴に関係なく、過去案件の検索が可能になります。

なお、WF承認の流れは、法務承認の前に、各事業部の部長が承認する様にするといいと思います。こうすることで、事業部内でも法務案件の共有ができると共に、法務確認が終わった契約書や法務相談事項を稟議決裁する際に、部長から「この案件は聞いていない」等の指摘を受けることを避け、社内のレポートラインを確保できるからです。

 

いかがでしたでしょうか。

皆様がこれから取り組む業務に少しでもお役に立てるヒントがあれば幸いです。

 

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本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

 

 

【筆者プロフィール】
堀切一成

私立市川中学校・高等学校、専修大学法学部法律学科卒業。
通信機器・材料の専門商社で営業に 7 年間従事した後、渉外司法書士事務所勤務を経て法務パーソンに転身。
JASDAQ上場ITベンチャー、東証一部上場インターネット広告会社、スマホゲーム開発会社、Mobilityベンチャーでの法務、経営企画等に従事後、現在はライブ動画配信プラットフォーム提供ベンチャー初の法務専任者として日々起こる法務マターに取り組んでいます。

 

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