キャッシュレス決済の法律構成 クレジットカード決済(後編)

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このコラムでは、民間企業でビジネス経験のある法務担当者が、企業法務の世界に関心のある方向けに、初めてでも分かりやすい内容に噛み砕いてノウハウを公開していきます。

 

はじめに

本コラムは、ビジネスの現場で法務担当者が本当に役立つためにはどうしたらいいか、という視点で様々なノウハウをお伝えしています。今回取り上げるのは、クレジットカード決済に関係する当事者の義務および取引の法律構成解説(後編)です。 前編はこちら

 

クレジットカード決済の当事者と役割

クレジットカード決済の商流に入ることについて事業検討をしたい場合、法務担当者としては、前編の①~④でご紹介した割販法及び周辺レギュレーションを念頭に置きつつ、自社がどの立ち位置になるか確認することになります。クレジットカード決済に関わる主な当事者と契約関係は以下の図の通りです。

 

ISS=イシュア―

ACQ=アクワイアラー

 

それぞれの当事者について、一般的に考えられる割販法上の位置づけは、以下表の通りです。

事業者の種別 割販法上の位置づけ① 割販法上の位置づけ② 根拠条文
 カード発行会社

(ISS)

 

クレジットカード等購入

あっせん業者

 クレジットカード番号等取扱業者  35条の16第1項(1号)
 クレジットカード番号等取扱契約締結事業者 ※1  35条の17の2  (1号)
 カード会社

(ACQ)

 

立替払取次業者

 クレジットカード番号等取扱業者  35条の16第1項(2号)
 クレジットカード番号等取扱契約締結事業者  35条の17の2  (2号)
 決済代行会社

(PSP)

 クレジットカード番号等取扱受託業者  35条の16第3項
 加盟店 ・クレジットカード等購入あっせん関係販売業者

・クレジットカード等購入あっせん関係役務提供事業者

 クレジットカード番号等取扱業者  35条の16第1項(3号)
 加盟店代理人  ★  なし(民法の代理)

 

位置づけ②については、初めて見る方にとっては分かりづらく混同しやすいため、差異が分かるよう赤色で違いを表記してみました。

 

上記のうち、「クレジットカード番号等取扱業者」については、いずれの当事者も該当するため(※2)、割販法第35条の16及び第35条の17の15に定める「必要な措置」の実務指針として認められている「実行計画」(解説は前編2)③参照)に従い、カード情報の安全性を担保する措置を講じる必要があります。また、「クレジットカード番号等取扱受託業者」に該当する決済代行会社(PSP)についても、実行計画にもとづき同様の対応が要求されます。

割販法第35条の16について、具体的には、「加盟店においては非保持化を基本とした取組を第一に検討」し、「カード情報を保持する加盟店やカード会社及び PSP については、PCI DSSへの速やかな準拠」を行う必要があるとされています。

なお、加盟店における「非保持化」とは、「カード情報を保存する場合、それら の情報は紙のレポートやクレジット取引にかかる紙伝票、紙媒体をスキャンした画像データ等のみであり、電磁的に送受信しないこと、すなわち「自社で保有する機器・ネットワー クにおいて『カード情報』を『保存』、『処理』、『通過』しないこと」をいう。また、決済専用端末から直接外部の情報処理センター等に伝送している場合も「非保持」に該当する」ことが「実行計画」において明らかにされています。

 

クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」にあたる場合には、経産省への登録が必要である(割販法第35条の17の2)と共に、不正取引防止のため加盟店の調査を行う義務等が課されます(割販法第35条の17の8)。クレジットカード番号等取扱契約締結事業者に該当するか否かは、事業者が加盟店審査の最終決定権限を有する場合か否か(※3)によって判断されます。

 

※1オンアス取引の場合には、イシュアーがアクワイアラーを兼ねるため、上記の整理となります。

※2 ★で示した加盟店代理人については、一般的に、包括加盟代理店または包括代理店と称されることが多く、実態としては、カード会社(ACQ)や決済代行会社(PSP)等の中間業者が担うことが多いようです。したがって、結果的に、割販法の適用を受けることが多いです。ただし、加盟店代理人が担う機能については、各社のビジネスモデルに依るところが大きく、場合よっては割販法上のいずれの立場にもあたらないこともあり、画一的な判断をすることは困難です。そもそも割販法の概念ではなく、民法上の代理人として、複数のクレジットカード決済加盟店のために事実行為や法律行為(ISSやACQの規約への申込、契約締結、審査情報の提出、売上代金の受領)を行う立場の事業者を指します。

※3 根拠資料:

・平成29年1⽉商務流通保安グループ商取引監督課「割賦販売法の⼀部を改正する法律について」p.4

https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/kappuhannbaihounoichibuwokaiseisuruhouritsu.pdf

・割賦販売法(後払分野)に基づく監督の基本方針 p.24

「なお、クレジットカード会社と加盟店との間に決済代行業等の中間業者が介在している場合には、加盟店契約の締結及び解除について最終決定権限を有する者がクレジットカード番号等取扱契約締結事業者に該当することに留意すること。」

https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/1802kappuhanbaihoukantokukihonhous

 

取引フローと加盟店による売上金回収の法律構成

上記に示した当事者によってクレジットカード決済が行われる際の加盟店の権利に着目し、以下の通り請求権の発生から売上金回収までの権利関係を3段階に分けて整理しました。

クレジットカード決済には様々な論点がありますが、全容を理解するための第一歩として、加盟店が、カード会員との間で生じた原因取引(以下の図における①売買契約)にもとづく売上をどのように回収するかをまずご理解いただくと良いと思います。

 

  • 売買契約成立と同時に加盟店からカード発行会社(ISS)に対する立替払請求権が発生

カード会員が加盟店で買い物をするとき、カード会員はただちに金銭の支払いを求められることはありません。代わりに、カード会員規約にもとづきカード発行会社(ISS)がその購入代金を立替えることになります。ここでいう立替えとは、民法第474条第1項における第三者弁済(売買契約における第三者にあたるカード発行会社(ISS)が、債務者=カード会員に代わって弁済すること)と捉えます(いわゆる立替え説です。これ以外にも債権譲渡説、保証説などがありますが、大枠の理解を趣旨とする本稿では割愛します)。その結果、加盟店は当該立替えを行ったカード発行会社(ISS)に対して請求権を持ちます。

なお、カード発行会社(ISS)はカード会員に対し立替えにもとづく求償権を持ち、一括払いであれば翌月に当該求償権を行使することで会員の銀行口座より引き落とす方法により立替えた金銭を回収します。

 

  • カード発行会社(ISS)から加盟店代理人へ着金した時点でカード会員およびカード発行会社(ISS)の支払債務が消滅

カード発行会社(ISS)は、加盟店代理人(通常は決済代行会社(PSP)やカード会社(ACQ)がこの立ち位置となりますが、それ以外の事業者がこの立場に立つこともあります)に対して送金を実施します。加盟店代理人は、加盟店に代わって売上代金を受領する立場であるため、カード発行会社(ISS)の立場に立てば加盟店代理人による金銭の受領を以て加盟店への支払債務の履行は完了したことになります。つまり、図の③にて発生した加盟店のカード発行会社(ISS)に対する立替払請求権は消滅します(代理人への弁済の提供により、法律上の効果が本人に生じるためです)。ただし、加盟店及び加盟店代理人の間の支払いはまだ行われていないため、加盟店は加盟店代理人に対して支払請求権を持ちます。加盟店による売上金回収は、実質的にはまだ完了しません。

 

  • 加盟店へ着金した時点で原因取引にもとづく加盟店の請求権が全て消滅

加盟店代理人は、加盟店に送金を行います(実際にはもっとたくさんの売買が繰り返されているので、売上を毎月数回にまとめて効率的に送金します)。加盟店代理人が送金機能を持たない場合には、加盟店代理人が決済代行会社(PSP)に送金委託を行う場合があります。加盟店に着金した時点で、売買契約にもとづく売上代金の回収が実質的に完了したことになります。なお、上記【1】【2】【3】の各過程で、関係当事者が手数料を控除しますので、加盟店は中間業者の手数料が控除された残額(売上金額から数%が差し引かれた金額)を受け取ります。

まとめ

クレジットカード決済における適用法令、取引の当事者、加盟店の売上金回収の法律構成を2回に分けてご紹介しました。クレジットカード決済特有の論点になるべくフォーカスしようという趣旨から、割販法以外の論点(例として、中間業者の為替取引該当性や出資法が禁じる預り金該当性など)については敢えて記載しませんでしたので、これらの論点については、クレジットカード決済以外のキャッシュレス決済手段について取り上げる際に解説できればと思います。

https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190304004/20190304004.html

 

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本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応下さい。

 

【筆者プロフィール】
高橋 ケン

慶應義塾大学卒。

大手メーカー法務部にて国際法務(日英契約業務を中心に、ビジネス構築、社内教育、組織再編、訴訟予防等)、外資系金融機関にて法人部門の企画・コンプライアンス・webマーケティング推進業務を経験。現在、大手ウェブ広告企業の法務担当者として、データビジネス最前線に携わる。

企業の内側で法務に携わることの付加価値とは何か?を常に問い続け、「評論家ぶらない」→「ビジネスの当事者になる」→「本当に役に立つ」法務担当者の姿を体現することを目指す。

シンプルに考えることが得意。

 

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