キャッシュレス決済の法律構成 クレジットカード決済(前編)

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このコラムでは、民間企業でビジネス経験のある法務担当者が、企業法務の世界に関心のある方向けに、初めてでも分かりやすい内容に噛み砕いてノウハウを公開していきます。

 

はじめに

本コラムは、ビジネスの現場で法務担当者が本当に役立つためにはどうしたらいいか、という視点で様々なノウハウをお伝えしています。今回は、昨今浸透してきたキャッシレス決済(ここでは現金を使わず、各種電子マネーにより商品やサービスの代金支払を行うことを指します。前払い、口座からの即時引き落とし、後払いといったタイミングにより適用法令が異なります。)のうち、最も取引量の大きい※クレジットカード決済に関係する当事者の義務および取引の法律構成について、2回にわたって解説したいと思います。

 

 

 クレジットカード決済の適用法令(割賦販売法)および周辺レギュレーション

基本的に、クレジットカード決済には割賦販売法の適用があります。例外的に、一括払いなどの取引日から2か月以内に精算が完了する場合には、いわゆるマンスリークリアとして割販法の適用除外となり事業者にも加盟店にも規制がかかりませんが、大半のクレジットカードは分割払いの機能を備えているため、割販法について理解しておく必要があります。そして、実務上は法令だけでなく周辺レギュレーションの内容も理解する必要があります(以下①~④)。

また、クレジットカード決済には複数の事業者が携わっており、それぞれの役割に応じて割販法上求められる義務が変わってきます。各当事者の割販法上の位置づけについては後編にて解説します。

 

①割賦販売法、施行令、施行規則等(所管:経済産業省)

https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/11kappuhanbaihou.html

カード発行会社、アクワイアラー、包括代理人、加盟店に対し、それぞれの役割に応じて適用可能性があります。

 

② 割販法第35条の18にもとづく日本クレジット協会の自主規制

https://www.j-credit.or.jp/association/self_imposed.html#area0203

日本クレジット協会(通称:クレ協)は割販法第35条の18を根拠とする経産省の認定を受けた自主規制団体です。割販法の適用を受ける当事者であれば、この自主規制に事実上従うことになります。カード会員の審査基準、不正取引があった場合の調査方法、加盟店審査項目、内部管理体制、反社の遮断など、割販法において課せられた義務について具体的な対処方法を決める際の参考となります。

 

③ 割販法第35条の16及び第35条の17の15に定める「必要な措置」を具体化したクレジット取引セキュリティ対策協議会「実行計画」 (2019年3月4日時点)

https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190304004/20190304004.html

2018年6月1日に施行された改正割賦販売法にもとづき、割販法の適用対象となる場合にはそれぞれの立ち位置に応じたセキュリティ対策が義務づけられました。「実行計画」は改正法における実務上の指針とされており、法令上の基準を満たすためには「実行計画」に記載された措置を講じる必要があります。主なポイントは以下の2点です。

 

【1】 法第35条の16: クレジットカード番号等の適切な管理(漏えい防止措置)

・加盟店におけるカード情報の「非保持化」(これと同等・相当の措置を含む)

・カード情報を保持する場合にはPCI DSS準拠

【2】 法第35条の17の15:クレジットカード番号等の不正利用防止(不正利用防止措置)

<対面加盟店の場合>

・決済端末の「100%IC対応」の実現

<非対面加盟店の場合>

・リスクに応じた多面的・重層的な不正使用対策の導入(パスワードによる本人認証、
セキュリティコード、属性行動分析、配送先情報)

 

上記の「実行計画」は、2020年東京オリンピック開催に向けクレジットカード決済の安全性を高めることや2027年6月までにキャッシュレス比率を現行20%から40%まで引き上げることを内閣府が「未来投資戦略2018」にて取り決めたことに伴い、クレジットカード決済普及に向けた環境整備の一環として、経産省主導で定められました。

 

④ 割賦販売法(後払分野)に基づく監督の基本方針

https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/1802kappuhanbaihoukantokukihonhoushin.html

法令にもとづく運用をする際の実務マニュアルです。例えば、後編にて解説する「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」に課される加盟店調査義務(施行規則第133条の5)について、より詳細に定めています。

 

以上のとおり法令及び周辺レギュレーションがあることを認識した上で、後編では、クレジットカード決済における代表的な当事者及び役割に照らして割販法上の義務を整理し、さらに加盟店の売上金回収に係る法律構成について解説したいと思います。

 

 

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本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応下さい。

 

【筆者プロフィール】
高橋 ケン

慶應義塾大学卒。

大手メーカー法務部にて国際法務(日英契約業務を中心に、ビジネス構築、社内教育、組織再編、訴訟予防等)、外資系金融機関にて法人部門の企画・コンプライアンス・webマーケティング推進業務を経験。現在、大手ウェブ広告企業の法務担当者として、データビジネス最前線に携わる。

企業の内側で法務に携わることの付加価値とは何か?を常に問い続け、「評論家ぶらない」→「ビジネスの当事者になる」→「本当に役に立つ」法務担当者の姿を体現することを目指す。

シンプルに考えることが得意。

 

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