ゼロから始める企業法務(第9回)/取締役会議事録

皆様、こんにちは!堀切です。

これから企業法務を目指す皆様、念願かなって企業法務として新たな一歩を踏み出す皆様が、法務パーソンとして上々のスタートダッシュを切るための「ノウハウ」と「ツール」をお伝えできればと思っています。今回は取締役会議事録についてお話いたします。

 

取締役会議事録は、取締役会の意思決定を証する重要な書面

取締役会議事録は、取締役会の開催毎に都度作成が義務付けられており、出席した取締役及び監査役には、署名/記名押印義務が課されています(会社法第369条第3項)。また、取締役会議事録は、10年間の保存義務があります(会社法第371条第1項)。取締役会が適法な意思決定を行っていたことや、善管注意義務を果たしていたことは、取締役会議事録の記載をもって証明することができるので、法的にも、実務的にも取締役会議事録は重要な書面になります。

 

登記添付書面になることも

また、代表取締役の選定、管轄区域内の本店移転、上場企業での株式、新株予約権の発行等、取締役会議事録が登記添付書面となることも多くあります。その様な場合は特に、決議された内容を正確に記載しないと、瑕疵のある登記がなされる原因にもなりますので、取締役会議事録には、適法且つ正確な記載が求められます。

 

議事録あるある

一方で、取締役会にイレギュラーな事態が発生した場合の他、ルーチンの取締役会実務においても、しばしば取締役会議事録の記載方法や内容、保存方法等に悩むことがあります。その様な「議事録あるある」について、私の経験から、対応策をいくつか紹介いたします。

 

①開始/終了時刻

基本的な記載事項でありながら、確認を忘れがちになるのが、取締役会の開催、終了時刻です。取締役会が実際に開催されていることを議事録からも読み取れる様、正確な開始/終了時刻をメモし、議事録に記載します。また、「午前10時01分開始」「午後1時39分終了」等の12時間表記だと、取締役会が正午12時に開始/終了した場合に、「12時」が午前なのか午後なのかという疑問が生じます。この様なことで悩まない様、時刻は「13時39分終了」等の24時間表記にした方が良いと思います。

 

②開催場所

特に社外役員に多いのですが、急な出張等で取締役、監査役が本店会議室での取締役会に参加できない場合があります。この様な場合は、電話会議かテレビ会議の方法で取締役会を開催します。その際の議事録の記載は、以下の様にします。

 

場 所

第1会場  東京都●●区●●丁目●番●号 ●●ビル●階 ●●株式会社 本店会議室

第2会場  ●●県●●市 ●●●丁目●番●号 ●●ビル●階 ●●株式会社 会議室

 

出 席 者

第1会場  取締役 ●●●●、●●●●、●●●●、●●●●

監査役 ●●●●

第2会場  取締役 ●●●●●

 

定款の定めにより代表取締役社長の●●●●氏が議長となり開会を宣し、上記のとおり第1会場及び第2会場における出席取締役及び出席監査役が確認され、取締役の過半数の出席を得ているので本取締役会の全議案に必要な法定の定足数を満たしている旨を述べ、次の議事の報告及び審議に入った。

上記開催場所の電話(テレビ)会議システムは、出席者の音声(と画像)が即時正確に他の拠点の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとなっていることが確認された。

 

 

そして、議事録の最後に、「以上をもって電話(テレビ)会議システムを用いた本取締役会は終始異常なく全ての議事を終了し、議長は●時●分閉会を宣した。」と結語を記載します。また、第2会場が国外であった場合は、「●時●●分(日本時間)開始」と記載すると、日本時間に基づいて開始/終了時刻が記載されていることが明確になって良いと思います。

 

③取締役会出席者

取締役会出席者の記載で悩むのは、議案の説明の際に出席した担当者や陪席者のオブザーバー等、取締役、監査役以外の氏名を出席者欄に記載するかどうかです。私は、取締役会は取締役と監査役による会議体なので、それ以外の出席者の氏名は記載しない様にし、議案の説明の際に出席した担当者については、議事録中に「議長の指名を受けた財務経理部長の●●より、別紙添付●の資料に基づき●●について説明がなされた」と記載する様にしております。また、こちらも社外役員に多いのですが、次の予定がある為、取締役、監査役が議事の途中で取締役会を退席することがあります。この様な場合は、当該取締役、監査役が退席した時刻をメモして置いたうえで、「第●号議案の終了後、取締役/監査役●●は●時●●分に議場を退席した」と記載する様にします。なお、途中退席した取締役、監査役についても、議事録への押印は必要となります。

 

④議事の記載量

会社によって、議事録にどれだけの情報を記載するかはまちまちかと思いますが、非上場会社は簡潔に、上場会社は詳細に記載する傾向があると思います。特に、社外役員が議案に対して意見や異議を述べた場合は、当該社外役員から、議事録に当該異議や意見を正確に記載することを求められる場合があります。私の経験では、大株主から派遣された社外役員と業務執行取締役とのやり取りが重なり、議事録が壮大なシナリオの様な記載量になったこともありました。その様な場合でも的確に対応できる様、取締役、監査役の許可を受けたうえで、議場でのやり取りはICレコーダー等で録音して置いた方が良いと思います。

 

⑤取締役会資料の保存方法

これも会社によってまちまちかと思いますが、取締役会資料の保存方法については、「取締役会議事録と一緒に製本する方法」と「取締役会議事録とは別に保存する方法」に分かれると思います。私としては、後者の方法をお勧めします。理由は、取締役会資料が膨大になった場合に、製本しようにも一般的なホチキスが通らない厚さになったり、幅広の製本テープが必要になってしまい、対応に困ることがあるからです。また、議事録をコピーやPDF化する際にも、前者の方法だと時間が掛かってしまいます。私の経験では、監査法人が議事録と一緒に綴じた資料をコピーする際に、製本した議事録を壊されたこともありました。

 

 

いかがでしたでしょうか。皆様がこれから取り組む業務に少しでもお役に立てるヒントがあれば幸いです。次回は、コンプライアンス体制の構築の一環として重要な、従業員への法務研修について、記事にできればと思います。

 

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本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

 

 

【筆者プロフィール】
堀切一成

私立市川中学校・高等学校、専修大学法学部法律学科卒業。
通信機器・材料の専門商社で営業に 7 年間従事した後、渉外司法書士事務所勤務を経て法務パーソンに転身。
JASDAQ 上場 IT ベンチャーでの法務マネジャー、東証一部上場インターネット広告会社での法務マネジャー・経営企画、スマホゲーム開発会社での法務マネジャーに従事した後、現在は MaaS サービス提供ベンチャー初の法務専任者として日々起こる法務マターに取り組んでいます。

 

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