非法学部企業法務マンの奮闘記~企業法務部門の機能について~

 

企業法務部門の機能、役割については定義されつつありますが今一度私が考える企業法務部門の機能等について整理したいと思います。

 

企業法務部門の2大機能

大きくは経営陣・事業部に対する支援機能と会社の法的リスクを管理して万が一トラブル等が発生したときに会社が被る損害を最小限にする牽制機能に大別できると思います。

 

支援機能とは、法的サービスを経営陣や事業部に提供することで会社の事業や業務執行を適正・円滑かつ効率的に実施できるようにする機能です。

「戦略法務」と呼ばれることもありますが、M&A等会社の重要な意思決定に法務の側面から関与することです。

 

次に牽制機能とは、日々寄せられる事業部からの相談や契約書のレビュー等を通じてリスクを管理し、将来発生するかもしれない法的リスクが顕在化する可能性を低減させることがメインです。

また、万が一取引先と紛争が生じた場合の訴訟対応等緊急時の危機管理もあります。

前者は紛争等を予防するという意味で「予防法務」、後者は、病人を治療する医者になぞらえて「臨床法務」と呼ばれることもあります。

 

この二つの機能を車の両輪にして回していくことで企業法務が機能するわけですが、最大限法務機能を発揮するためには、常日頃から取締役をはじめとした経営陣や営業、開発等の事業部門との信頼関係構築が欠かせません。

このように、会社の法務機能は、ビジネスを守り、成長を牽引する立場になる必要があります。

そのためにまずは自社のビジネス(製品やサービス、製品が製造されて市場に出るまでのプロセス、競合他社、マーケット、マーケットに影響を及ぼす可能性のある要素)について興味を持ち、積極的に情報を集めることが大切です。

業務内容についての理解が深まり、仕事が楽しくなります。

 

有効なコンプライアンス体制構築のために

また私が日々の仕事のなかで感じることですが、世の中から殺人や窃盗等の犯罪行為を根絶できないように、自社が関係するビジネストラブルを完全に予測し、防御することは不可能です。

そこで重要になるのが前述した予防法務になるわけですが、問題が起こってから法務部門が動き出す、つまり痛い目に遭わないと予防法務の重要性を認識できないと感じている方も多いのではないでしょうか。

こうしたことの背景にあるのは、予防法務活動の成果の測定が難しいということにあるのではないかと思います。

確かに、大きな法律問題を抱えていないことが予防法務活動の直接の成果なのかあるいはたまたまそういう状況になっているかの判断は難しいものです。

一方で発生した複雑な法律問題を手際よく処理した際の手腕は目に見える形で経営層に対するアピール度も高く、経営トップに対するパーフォーマンスが評価の尺度になりやすいのです。

成果主義を中心とする最近の人事制度の下では、確かな眼力に基づき成果を公平に評価するシステムが担保されなければ、地道な予防活動に従事しているスタッフのやる気を失わせることになります。

法務部門が万能ということではないが、法務部門が事業部門と緊密に連携することによりより有効なコンプライアンス体制の構築と運用が可能になるのではないでしょうか。

 

有効なコンプライアンス体制構築に寄与する日々の活動に法務部門のメイン業務である契約書の審査、起案、検討があります。

これはビジネス感覚の醸成、リスクの早期発見につながる重要な業務です。

次回は契約業務について述べたいと思います。

 

 

==========

本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

 

【筆者プロフィール】
HIRO

人材ビジネス業界における営業に約5年従事した後、法務マンに転身。500名規模の独立系システムインテグレーターでの法務職に従事した後、現在はマザーズ上場企業の法務部に勤務、自身の法務キャリアを深めるために、コーポレート法務を中心に日々業務に取り組んでいる。

 

関連記事

More from my site

  • 2019年7月8日 『机上で論ずる企業法務』:第7回 契約法務 先人のやり方の踏襲・模倣・集積により帰納的に語られがちな『法務』。それゆえに、『法務』という概念は、多くの法務担当者の中で、どこか場当たり的で統一性がなく、全体像の見えない混沌とした概念になってしまっています。 本コラムでは、この『法務』の概念をシンプルに再定義した上で、新たなカテゴライズを施しながら個別の法務業務をマッピングし、“先例”ではなく“ロジック” […]
  • 2019年4月23日 『机上で論ずる企業法務』:第5回 法務の三大業務②~義務履行の管理~ 先人のやり方の踏襲・模倣・集積により帰納的に語られがちな『法務』。それゆえに、『法務』という概念は、多くの法務担当者の中で、どこか場当たり的で統一性がなく、全体像の見えない混沌とした概念になってしまっています。 本コラムでは、この『法務』の概念をシンプルに再定義した上で、新たなカテゴライズを施しながら個別の法務業務をマッピングし、“先例”ではなく“ロジック” […]
  • 2019年6月7日 『机上で論ずる企業法務』:第6回 法務の三大業務③~権利行使の管理~ 先人のやり方の踏襲・模倣・集積により帰納的に語られがちな『法務』。それゆえに、『法務』という概念は、多くの法務担当者の中で、どこか場当たり的で統一性がなく、全体像の見えない混沌とした概念になってしまっています。 本コラムでは、この『法務』の概念をシンプルに再定義した上で、新たなカテゴライズを施しながら個別の法務業務をマッピングし、“先例”ではなく“ロジック” […]
  • 2019年3月7日 『机上で論ずる企業法務』:第4回 法務の三大業務①~権利義務の取捨選択~ 先人のやり方の踏襲・模倣・集積により帰納的に語られがちな『法務』。それゆえに、『法務』という概念は、多くの法務担当者の中で、どこか場当たり的で統一性がなく、全体像の見えない混沌とした概念になってしまっています。 本コラムでは、この『法務』の概念をシンプルに再定義した上で、新たなカテゴライズを施しながら個別の法務業務をマッピングし、“先例”ではなく“ロジック” […]
  • 2019年2月3日 『机上で論ずる企業法務』:第3回 法務業務を分類する 先人のやり方の踏襲・模倣・集積により帰納的に語られがちな『法務』。それゆえに、『法務』という概念は、多くの法務担当者の中で、どこか場当たり的で統一性がなく、全体像の見えない混沌とした概念になってしまっています。 本コラムでは、この『法務』の概念をシンプルに再定義した上で、新たなカテゴライズを施しながら個別の法務業務をマッピングし、“先例”ではなく“ロジック” […]
to top