ベンチャー法務の特徴と心構え(第3回:企業とSNS②~その投稿大丈夫?事例で学ぶ景表法~)

はじめに

前回は、企業とSNS第1回目として、「炎上動画」の問題点とその対処法について検討しました。今回は、SNS投稿時に注意すべき不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」)のポイントを事例形式で検討します。実際に起こりそうな架空の事例を素材に思考の手順をトレースしていきますので、是非皆さまの日々の業務にお役立てください。

 

事例

あなたは健康食品メーカーの法務部に勤務しています。会社が開発した新製品のサプリメントのプロモーションとして、事業部担当者が以下の内容をSNSに投稿しようとしています。この投稿に関する景表法上の問題点はどこにあるでしょうか。

 

【投稿内容(案)】
「日本初!100%痩せる!有効成分を独自の製法で配合した画期的なダイエットサプリメント(有効成分含有量は競合A社の2倍!)が誕生!今なら通常価格10,000円の半額、5,000円でお試しいただけます!」

 

 

 

1 景表法の目的
まずは、景表法の目的を確認します。

 

景表法1条
『この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。』

 

この法律の究極の目的が「一般消費者の利益保護」であること、この目的を達成するため、取引に関連する不当な景品類、表示による誘因を防止するものであること、そのための手段として、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限し、あるいは禁止するものであることがわかります。この目的規定は個々の禁止行為の解釈指針になるものです。

 

2 事例の検討
(1)表示
景表法は、不当な「表示」を禁止するものですから、まずSNSの投稿が「表示」に該当するかが問題となります。この点について、法は以下の通り表示の定義規定を置いています。

 

景表法2条4項
『この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するものをいう。』

 

 

内閣総理大臣が(告示で)指定するものについて、詳しくは告示を参照していただきたいのですが、SNSは告示で定められている「情報処理の用に供する機器による広告その他の表示」として「表示」に該当することになるでしょう。

 

(2)優良誤認表示
広告が「表示」に該当する事が確認されたら、いよいよ景表法で禁止されている表示に該当しないかどうかを個別に検討していきます。まず検討すべきは「優良誤認表示」です。優良誤認表示とは、以下をいいます。(景表法5条1号)

 

『商品や役務の品質、規格その他の内容について、①一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、または②事実に相違して当該事業者と同種もしくは類似の商品もしくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、③不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの。』

 

上記の①、②の要件は、それぞれ③にかかっていると読むのが自然でしょう。

事例についてみていきます。ここでは「日本初」「100パーセント痩せる」という文言が、①+③の優良誤認表示に該当しないか、慎重に検討する必要があります。「日本初」というのは客観的かつ確実な証拠や調査に基づく表現でしょうか。このような表現を目にした場合、客観的な証拠による裏付けをとる、あるいは表現を見直すよう求めることが必要となります。
次に「独自の製法」や「有効成分含有量は競合A社の2倍」という文言が②+③の優良誤認表示に該当しないか検討します。
その製法が本当に自社独自のものなのか、他社で同じような製法を採用しているところはないか、有効成分含有量が客観的に真実であるのか、一つひとつの文言をクリアにし、疑義が生じるのであれば表現の修正を行う必要があります。
協業他社に対する優位性では、どうしても表現に力が入ってしまいがちで、景表法違反の問題を生じやすいものです。法務の担当者は冷静に違法性の判断ができるようにしておくべきです。
優良誤認として問題になりやすい表現として以下のようなものがあります。このような文言に出くわした際は、注意深く検討する癖をつけると良いでしょう。

■優良誤認表示で問題になりやすい表現
・日本(世界)一
・日本初上陸
・トップ
・日本(世界)最大
・NO1/第1位
・100パーセント
・ブランド~

 

(3)有利誤認表示
優良誤認表示の論点がクリアになったところで、次に有利誤認表示を検討していきます。
有利誤認表示とは、以下をいいます。(景表法5条2号)

 

『商品や役務の価格その他の取引条件について、実際のものや当該事業者と同種もしくは類似の商品もしくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの』

 

簡単に整理すると、優良誤認表示が商品やサービスそのものについて著しく優良であることを表示するのに対し、有利誤認表示とは、商品やサービスの「価格などの取引条件」について著しく有利であることを表示することです。販売価格のほか、アフターサービス、保証期間、金利負担などが「取引条件」の典型例です。

有利誤認表示に関して、実務上しばしば問題になるのが、いわゆる「二重価格表示」です。二重価格表示とは、2つの値段を表示して値引き幅をことさらに強調することによって、消費者の購買意欲を刺激しようとするものといいます。

たとえば、将来値上げをする予定がないにもかかわらず「今だけの価格」と表示するもの、キャンペーンの直前に一時的に値上げを行ってキャンペーン価格の割引率を強調するもの、根拠のないメーカー希望小売価格と比較するものなどがこれに該当します。
二重価格表示の問題点は、消費者に対して「実際の価格」を見えなくしてしまうところにあります。したがって、具体的な表示が二重価格表示に該当するかどうかは、「何が本当の価格か」という見地から判断されます。将来の販売価格と比較する場合には、その将来の販売価格に合理性があるか否か、過去の販売価格と比較する場合は、表示された過去の価格が相当期間にわたって販売されていた価格=「本当の価格」か否かで違法性が判断されます。
詳しい内容は消費者庁のホームページやガイドラインの形で公開されていますので、一読しておくとよいでしょう。

事例についてみると「今なら通常10,000円の半額5,000円でお試しいただけます」との文言が二重価格表示として有利誤認表示に該当するおそれがあることがお解りいただけると思います。
このような文言に直面した際にすべきことは「通常価格」の確認です。通常価格として表示された価格に合理性があるのか、その価格は本当に相当期間にわたって販売されていた価格なのかを確認し、疑義が生じる場合は文言を修正する必要があるでしょう。

 

(4)その他の論点
景表法では、優良誤認表示・有利誤認表示のほかに、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」を禁止される表示として規定しています。

①清涼飲料水の果汁に関する表示
②商品の原産国に関する表示
③消費者信用融資に関する表示
④不動産のおとり広告に関する表示
⑤その他おとり広告に関する表示
⑥有料老人ホームに関する表示

ご自身の業界がこれらに該当する場合は必ずチェックをしておく必要があります。

 

3 契約書レビューに合わせてSNSレビューを
以上検討してきたように、SNSによる投稿は、気を付けなければ景表法違反の問題を生じる可能性が大いにあり、実際にコンプライアンス意識が高いはずの大手企業・大企業でも景表法違反を指摘される事例がしばしば発生しています。
したがって、企業としては景表法違反の危険性を十分に認識したうえで、契約書のチェックと同じように、SNSの投稿に法務部が関与するフローを構築することが望ましいと思われます。また、法務部と広報部の連携によって、景表法違反を未然に防止する仕組みを構築することが求められるのではないでしょうか。

 

 

 

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本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

 

 

【筆者プロフィール】
小俣 浄

慶應義塾大学法学部法律学科卒
早稲田大学ロースクール修了
大手ITベンチャーグループの法務担当として契約法務、紛争対応をはじめ、新規事業立ち上げ、M&A、知的財産戦略、第三者割当増資、組織再編など幅広い業務を経験。
現在は、自ら創業した会社の経営を行うほか、専門学校でビジネス法務やファイナンスの講義を担当するなど、後進の育成にも力を入れている。
思い立ったらすぐに行動する性格。フットワークの軽さとノリの良さが強み。

 

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